春木麻衣子展(6/25)
TARO NASU GALLERYにて。(6/24〜7/16)現在開催中!
http://www.taronasugallery.com/exh/index.html

入口を入ると正面の壁に比較的大きく引き伸ばされた風景写真。
・・・しかし、その画面のほとんど、縁の部分を除く画面全体が真っ黒で。

それでも時間をかけて対峙していると、黒の中から、そのまわりの黒くない部分と繋がる世界、風景が見えてきます。「目が慣れる」ということも多分にあると思いますが、何かが見えてきた時の嬉しさは確かにあって、これはおそらく作り手の意図に追い付いた達成感みたいなものかな、と。

この黒の部分、詳しくは分からないのですがギャラリーのスタッフの方に説明していただいたところによると、光を長時間取り込んだことによって黒く見えるそうで、実は自然な色(縁の部分で見られるような)を濃くした延長の「黒」とのことでした。
ちなみに今回展示されている3点は、それぞれ赤、青、黄という色の三原色をとらえたものとのこと。

これら以外にも数点展示されていて、この黒の写真があるせいで余計にそのやわらかな明るさが心を打つ風景の中の光を収めたような作品(明るい、つまり白い部分はむしろ光を「捕らえてない」といえそうですが・・・)など、印象的なものが多いです。
そういうふうにして撮られた写真は、パステル画に通ずる軽やかさを感じます。

方法として写真でないと表現できないことを突き詰めている作家の作品は、難解な謎掛けのような感触があるような気がします。
またあらためてじっくり時間をかけて拝見したいと思います。
樋口佳絵「24℃」(6/25)
APS西村画廊にて。(6/21〜7/9)現在開催中!
http://www.nishimura-gallery.com/exhibition/2005/higuchi24.html

学校でのいろんな場面を描いたような作品。
パネルに直接彩色されているようで(テンペラと油彩とのこと)、パネルのベニヤ板の表面のざらつきもそのままに、決して濃いわけではない色彩であるにもかかわらず強く印象に残る作品です。

作品に登場する子供たちの表情がとにかく、素朴さがある意味振り切れているような、そんな感じ。
小さな目をしていて、その瞳孔は縮んでいて、開かれた小さな口から覗く歯のきれいな並び具合がかえって奇妙だったり。
その縮んだ瞳孔が見つめる先には、とふと考えて、実のところ何も見ていないんじゃないか、なんて想像が浮かんできます。
また、顔が向く方向も正面か横といった具合に実に無機的。
そういった子供たちがプールの中にいたり、広げられた大きな布の端を持っていたり、それぞれの机についていたり(しかも机の上から床にわたって水がこぼれている)...。
この「無機的なものの向こうにある無垢」といった雰囲気を前にして、妙に引き込まれてしまって...。
ずいぶん昔に体験した学校での記憶と、体験したことのない世界への好奇心とが混ざりあった不思議な感情が湧いてきました。

一点だけ、別の意味で気になった作品が。
タイトルは失念してしまいましたが、テーブルのそばの壁に掛かっていた作品、女の子が壁の前にいるといった内容だったと思うのですが、この作品にのみ、背景に整然とした模様が下地に描かれていて、おそらく型を使ったと思われますが、この部分だけ違う響きがあって大変興味深かったです。

ところで、この樋口さんの作品、軽く強烈なヒネリが入っているところがすごく西村画廊っぽいなぁ、と思います。
舟越桂あたりに惹かれるのと似た感覚で。
・にゅうす展。 @東京藝術大学 大学美術館陳列館(6/21〜6/28)
http://homepage.mac.com/yuran_n/informationpage/information.html
芸大油画新スタッフの展示。
油彩の作品が中心と思いきや・・・このあたりは相当にフレキシブルで、版画からオブジェ、映像、体験型インスタレーションさまざまな形態の作品が展示されていてちょっとびっくり。
特に印象に残ったのは、(たぶん)石膏でできた大きな器の内側に風景などを描いた山崎秋人さんの作品。
壁に展示されていたのですが、曲面に描かれた風景は、距離をおいて観るとまるで魚眼レンズで覗いているような感じになって新鮮。
ファイルを拝見したら、山崎さんは他にもユニークな作品を製作されていました。

・Marie de Mongalfie + Mariko Hasumi CIRCUS @gallery J2(6/20〜6/26)
http://www.g-j2.com/2005/artist/marie/01.html
蓮實真理子さんのフレスコ画と細工を施された譜面、そしてフランス人パフォーマンス作家、マリー・ドゥ・モンゴルフィエさんの映像作品。
この映像、およそ作業をするような感じではない白い服を着た女性(マリーさんご本人)が森の中で斧と鋸を使って木を切るというもの。なぜか見入ってしまい、感情移入してしまうのは木を切る女性ではなく切られる木の方だったのも不思議といえば不思議。。。
フレスコ画というのは初めて観たような気がしますが、石膏製らしい表面に直接描かれていて、そのざらついた表面に蓮實さんの実にざっくりとした絵が描かれていて、それがまた仰々しい額に収まっているのが妙に面白かったです。

・傍島浩美「家具作りの手法」 @美篶堂(6/14〜6/26)
http://www2.ttcn.ne.jp/~misuzudo/gallery.html
あの美篶堂で椅子の展示とは、いったい・・・と、半分心配しつつ(笑)行ってきたのですが、心地よく収まっていて安心(笑)。
美篶堂のギャラリースペースに置かれている椅子やテーブルが傍島さんの製作によるものということで、美篶堂と傍島惨とのつながりが分かって納得。
椅子、箸置き、鍋敷きなど、木の温もりが伝わってきました。

・尾形純展 @ギャラリー21+葉(6/20〜7/2)
http://www.gallery21yo.com/exh-folder2005/ogata/ogata.html
黒、緑、オレンジなど、キャンバスに広がるひとつの色彩、そこに、揺らぐように存在する何か。
微生物や深海生物など、外殻が透けている生物を見る時のと似たドキドキ感がありました。
黒地に銀の絵具で描かれた大きな作品の、黒と銀とのバランスが特にスリリング。

・「彫刻の本能vol.2」伊藤一洋展「Liquid Golden Babies」 @なびす画廊(6/20〜6/25)
http://www.nabis-g.com/exhibition/2005/ito-k.html
ブロンズと蝋とで製作された抽象オブジェ。
ブロンズの輝きや、鋭どく尖った先端。
部分的に白濁色の蝋で覆われているせいか、金属的なイメージよりもむしろ「骨」、有機的な印象だったのが意外でした。

・渡邊香月 個展 〜華〜 @ギャラリー銀座フォレスト(6/19〜6/25)
墨絵風のアクリル画。
一部、和紙が貼られていたり針金が巻かれていたり。
白地に黒の墨絵風の「和」の印象と、アクリル絵具という画材の「洋」の質感との違和感が面白いです。
もともと書道(だったかな?)をなさっていた渡邊さん、このスタイルの製作を始められてから間もないそうで、もっと熟れてくると更に独特の世界観を見せてもらえるような期待感を抱かせてくれました。

・上野健治展 @アートスペース羅針盤(6/20〜6/25)
http://rashin.drawing.jp/ex/2005/0620/index.html
明るく軽やかなパステル調の色彩で描かれた女性の肖像画。
目にやさしい感じで。

・間島秀徳展 Kinesis:新たな生成の場 @art space kimura ASK?(6/20〜7/2)
http://www2.kb2-unet.ocn.ne.jp/ask/Schedule/majimah.htm
壁いっぱいに広がる青の世界に圧倒されて。。。
あと、大きな円の画面の作品も。映像ではこちらの作品が海が見える八角形(かな?)の部屋の床に置かれている様子が映し出されていて、独特のイメージが伝わってきました。

・高瀬滋子展 @OギャラリーUP・S(6/20〜6/26)
http://www4.big.or.jp/~ogallery/Pages/ryakureki/takase.html
一見暗い色彩なのですが、重さはなくむしろやわらかい印象の岩絵具の作品。
街を覆っていく森のイメージとのことなのですが、岩手の森のその「強さ」に感銘を受けられそうで、森主体のポジティブなメッセージが込められているとのことでした。

・エンク・デ・クラマー展 @Oギャラリー(6/20〜6/26)
http://www4.big.or.jp/~ogallery/Pages/ryakureki/enk.html
一部コラージュも含んだモノタイプの版画作品。
ちょっと明るめながら、深い印象の赤に浮かぶ、銅版による黒の線の力強さ。
版画による抽象画は、絵画と違って作品になるまでにひと手間加わるせいか、すんなり受け入れられるような気がします。

・稲森栄敬「GT」 @ギャラリーSIDE 2(6/3〜7/2)
http://www.galleryside2.net/index.html
写真です。
その風景の「音」が聴こえてくるような。。。
車内から撮られた写真で、朝靄の幽玄さや、バスとすれ違いながら後方からのライトを白く反射するサイドミラーなど、その「瞬間」の魅力が捉えられていたように思います。

・エンライトメント|鏡の嘘 @HIROMI YOSHII(6/10〜6/25)
http://www.hiromiyoshii.com/exhibition/LIE_OF_MIRROR-pic1.html
コンピュータで補正された鏡や王冠などのプリント。
近付いて観るとひとつひとつの色彩がしっかりとその境が存在しているのが妙に魅力的でした。
だんだん「あれ?」という気持ちになっていく、鏡台の前で身支度を整える女性の映像も面白かったです。

以下はあらためて感想を。
・瀧下和之「桃太郎図ノ弐百弐・鬼ケ島で×××。」展 @ギャラリー和田(6/20〜6/30)
・橋本夕起夫展 @巷房・space kobo & tomo・巷房階段下(6/13〜6/25)
http://www.spinn-aker.co.jp/kobo/k-guide.htm
・毛利武士郎展 @村松画廊(6/13〜7/9)
・樋口佳絵「24℃」 @APS西村画廊(6/21〜7/9)
http://www.nishimura-gallery.com/exhibition/2005/higuchi24.html
・神尾正次郎 個展 pray...[祈り] @月光荘画室2(6/20〜6/26)
http://www.shojirokamio.jp/info2.html
・神崎絵里展 -瓶詰模様- @T-BOX(6/20〜6/26)
http://www.tbox.co.jp/tbox/2005/050620.html
・春木麻衣子展 @TARO NASU GALLERY(6/24〜7/16)
http://www.taronasugallery.com/exh/index.html
・あるがせいじ新作展 @レントゲンヴェルケ(6/4〜7/2)
http://www.kgs-tokyo.jp/interview/2005/050611/0611.htm
・レオノール・フィニ展 @BUNKAMURAザ・ミュージアム(6/18〜7/31)
http://www.bunkamura.co.jp/museum/event/fini/index.html
先日のはろるどさんからに続いて、「Maya Gallery(Art & Illustration)」のMayaさんからもバトンをいただいてしまいました。
http://diary.jp.aol.com/ybnkmzr/602.html

Q1.コンピュータに入っている音楽ファイルの容量は?
ゼロです。

Q2.今聴いている曲は?
Q3.最後に買ったCDは?

渡辺香津美「ギタールネッサンス2[夢]」。
今年の2月に行われて僕も聴きに行った紀尾井ホールでの公開録音を含む、渡辺香津美のソロギターアルバム。

Q4.よく聴く、または特別な思い入れのある5曲は?
バトンの渡し手が違うのだから、セレクションの仕方も変えてみます。
はろるどさんからバトンをいただいた時は少々硬派なセレクションにしてみましたが(はろるどさんのセレクションもかなり硬派な感じで、それはそれで大変興味深いのです)、今回はMayaさんからということで、Mayaさんの作品のイメージも僕なりに織り込みつつ、選んでみました。
無論、大好きな曲ばかりです。
・つじあやの「雨音」(「恋恋風歌」より)
http://www.jvcmusic.co.jp/speedstar/-/Discography/A012809/VICL-61129.html
・Cymbals「Highar than the Sun」(「sine」より)
http://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A012794/VICL-60898.html
・葛谷葉子「サイドシート」(「MUSIC GREETINGS VOLUME TWO」より)
http://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/YokoKuzuya/music/two.html
・Bonnie Pink「Lie Lie Lie」(「Heaven’s Kitchen」より)
http://www.bonniepink.jp/disco/album/kitchen.html
・高田みち子「春を待ってる」(「Buzz Songs」より)
http://www.sonymusic.co.jp/Music/Arch/SR/MichikoTakada/SICP-10012/index.html

Q5.バトンを渡す5人は?
5人、というのはやはり無理なのですが、もしこれをご覧になられたら、BROWN SUGARさん、お願いします!
うらわ美術館にて。(4/29〜6/26)
http://www.uam.urawa.saitama.jp/tenran_doc.htm

「山寺 後藤美術館」収蔵のヨーロッパ絵画の展示。
宮廷絵画、バルビゾン派とその周辺、フランス以外の絵画、と3つのカテゴリーに分かれていて、やはり最初の宮廷絵画はどうにも苦手でしっかり観なかったのですが、バルビゾン派とその周辺の作品は、未だ未知の作家がいたり、既知であってもそれはそれで初めて拝見する作品に出会えたりで、これはこれでけっこう楽しめました。
また、損歩ジャパンでのフランス絵画展を観てからそれほど経ってないおかげで、その時に初めて知った作家の他の作品を観ることができたのも収穫。

特に印象的だった作品。
ディアス・ド・ラ・ペーニャの「フォンテーヌブローの森」。鬱蒼と茂る森、その中の池。そこから見える空。
シャントルイエ「黄昏」。川で水を飲む牛。水平線と平行に広がる夕暮れの雲。
シャルル=エミール・シャック「月夜の羊飼い(帰路)」。羊飼いと羊の群れが半月に照らされて、その逆光で薄明るいシルエットが浮かび上がっている。暗く静謐な色彩感。
クールベの大作「波」。大きさもあってか、異様な力強さ。海面を迫る激しい波と、空に広がる赤い雲。
シェニョー「バルビゾンの野の羊飼いと羊の群れ」。遠い夕焼け、木立のシルエット。丁寧に描写された羊の毛並み。
ドレ「城の夕暮れ」。深いオレンジの空、城や橋のシルエット。高い木々。濃い色彩がインパクトありました。

印象派とはまた違った味わいの、写実的な風景画を堪能。

二人展(6/12)

2005年6月22日 アート
カフェギャラリーあっぷるはうすにて。(6/1〜6/15)。

野地美樹子さんと青山健一さんの二人展。
これまで折りに触れて拝見してきた野地美樹子さんの作品を観に大宮へ。
普段足を運ばないところなのでもっと迷うかなと覚悟していたのですが、会場の「あっぷるはうす」は大宮サッカー場のすぐそばですでに何度か通ったことがある通りにあり、逆に「こんなところに・・・」という思いが...。

1階のカフェスペースと2階のギャラリーがあり、厨房を除くすべての壁に、野地さんと青山さんの作品が展示されていました。
野地さんの作品は、僕にとっておなじみの「イスシリーズ」に加えて今回初めて「樹木シリーズ」の作品も展示。これまで「樹木シリーズ」は銀杏の作品しか拝見したことがなかったので、こちらでいろいろと拝見できたのがまず嬉しかったです。
「イスシリーズ」は、そのスタイルにひとつの雰囲気、思わず頬が緩むような和めるやわらかな感触というか、作品ごとに違う場面が描かれていても、同じような世界観が伝わってきてそれが心地よいのですが、「樹木シリーズ」は描かれる風景や樹木の種類によってぜんぜん違う世界観が伝わってくるようで。
朝靄に霞む巨木の根元の神々しさ、太い幹から広がる枝葉にたくさんの林檎を実らせる木の雄大さとかわいらしさを持ち合わせた表情...「イスシリーズ」とは違った、スケールの大きな世界。じっくりと対峙すればそれだけ応えてくれるような...。
もちろん、「イスシリーズ」も素敵です。イスがあるさまざまな場面、イスだけじゃなくてピアノがあったりトランプや汽車の模型が置かれたテーブルがあったり、そんな場面にいるちょっといたずらっぽいネコがまたかわいい...。石膏による凹凸感と、やわらかな色彩。心が和みます。
先日の芸大修了展でも展示されていた模写も改めて拝見できました。

今回初めて、ようやく野地さんとお目にかかることができ、これまで絵を拝見してきて得た感動をようやく直接御本人に伝えることができました。
また、製作におけるエピソードもいろいろと伺えました。
意外だったのが、こちらやC-DEPOT展で展示されていた、銀杏の木の下にイスが描かれている作品のことで、これらが初めて「イス」と「樹木」が同じ画面に登場した作品ということでした。銀杏の葉は「イズシリーズ」のいくつかの作品でも見受けられるのですが、言われてみればなるほど「樹木」そのものは登場してなかったなぁ、と。

青山さんの作品は、C-DEPOT展がちゃんと意識して拝見したのは初めてで、そちらに出展されていた作品はコミカルな感じに野菜・果物が描かれているものでしたが、こちらではもっとおとなしい雰囲気で。
ただ、描かれているものの佇まい、あたかも画面上に「置かれた」ような感触があり、その落ち着いた感じが印象的でした。
岩絵具ですが色彩は洋画っぽい感じで、でも作品の雰囲気はむしろ墨絵の静物画に近いような...。
もっといろいろと拝見してみたいです。

素敵な作品でいっぱいの展示を拝見できて、充実した気分。
大宮まで足を運んだ甲斐も充分にありました。東京U-!8も勝ったし(笑)。
PARCO MUSEUMにて。(6/10〜6/26)
http://www.parco-art.com/web/museum/heiwa_poster/

現 在 開 催 中 !

「PEACE〜平和」というよりも「反戦」をテーマに、内外の数多くのアーティストがそれぞれが持つセンスを存分に、十二分に発揮して製作されたポスターが、会場内にずらりと並んでいて圧巻。
リトグラフやシルクスクリーンの手法で製作されたものが多く、中には木版画やコラージュ作品も。

「反戦」というとどうしても堅苦しいイメージが湧いてしまうのですが、こちらに展示されている作品の多くは強烈に毒が効いたユーモアが満載で。
モチーフになっているのが米大統領だったり星条旗だったり、石油やハトや戦車、ミサイルなどの兵器といったイメージしやすいものが多いこともあって、作品のメッセージはかなり分かりやすく、取っ付きやすいです。タイトルも同じく、結構なヒネリが入ってたりします。
やはり未だににイラク戦争を取り上げていると思われる作品多し。

「反戦」ということを脇に置いといても、その色彩感や構図的なバランスについても当然素晴らしく、いちいち舌を巻きます。
その豊かな色彩感に浸るべく、作品のメッセージ自体は非常に分かりやすいのにも関わらず、1枚1枚じっくりと時間をかけて観ました。

特に印象に残った、というか、ヤラれた作品は、銃を抱えた胎児を描いた作品が強烈にクールで、そのために批判の切れ味が鋭く感じられたのと、マクドナルドのあの黄色い「M」のマークをさかさまにして(要するに「W」)、その下に「I’m Bombin’ It」と書かれてあるのには、その強烈な皮肉にものすごい勢いで思わず苦笑い。
あと、G.I.Georgeなんかも笑ってしまいました。
とにかく、ツッコミどころ満載のものから刺すようなシャープさのものまで、その表現法は様々。

できることならもっとたくさんの作品について書きたいところなのですが、メモを持っていかなかったために細かく記録できず...それよりも実際に見に行ってほしい!
グッズコーナーにいらっしゃったスタッフの方とお話ししたところでは、この企画のパンフレットを製作しないかわりに、カメラで撮影可とのことでした(ネットで公開も可、だそうです)。
こういうことで堅苦しくするんじゃなくて、もっと伝えるべき大事なことがある、というこの企画のコンセプトそのもの。

とにかくオススメです!
平日の夜ということもあってかお客さんの数も大変少なくて、ほとんど僕ひとりでこの空間を独占という贅沢な鑑賞だったのですが、この展示に人が少ないというのはやはりもったいない(観にくるお客さんは外国の方が多いそうです)。
会期終了が迫っている中でのレコメンドとなってしまって悔しいのですが、こちらは有料ながら夜9時まで開いていることもあるので、たくさんの人に見に行ってほしいと願います。
デザインに興味がある人にとっては必見の展示であることは間違いなし!
なびす画廊にて。(6/6〜6/11)
http://www.nabis-g.com/exhibition/2005/arai-k.html
http://www.kgs-tokyo.jp/interview/2005/050606/0606.htm

油彩が中心(一部銅版画)の、ユーモア溢れる作品。

大きな作品には女の子と犬が登場していて(中には変な爬虫類も)、それぞれコミカルな場面が描かれています。
そして全ての作品はグレーや茶系の土っぽい色彩でまとめられていて、強い色でないおかげでその作品の個々のストーリーとじっくり対峙できるようでもあります。
小さめの作品には、犬だけだったり女の子だけだったり...大きい作品と比べてストーリー性が薄い分、作品の筆致をしっかりと楽しむことができます。
ちなみに犬は実在の犬がモデルで、女の子にはモデルがいるわけではないそうです。

描かれている内容が分かりやすくて面白かったのはもちろんですが、それ以上に僕が新井さんの作品に釘付けになってしまったのは、やはりその油彩独特の質感がしっかりと活かされているからでして。
大きな作品だと、水着の女の子が浮き輪に乗っかって水面に浮いている作品と、その向かいの壁にあった犬の立ち姿(確かそうだったような・・・)の作品。
マッドな油彩。岩絵具のとはまた違った画面表面の凹凸感が絶妙かつ精巧で、つや消しの絵具の、「絵具」そのものの質感に見とれました。

過去の作品も拝見させていただいて、女の子と犬の作品が中心ながらファンタジックな作風のものもあり、このファニーな作品も良いのですが、もっといろんな雰囲気の作品もぜひ拝見したくなりました。
SCAI THE BATHHOUSEにて。(5/12〜6/18)
http://www.scaithebathhouse.com/main/03exhibition/data/FilmsandPaintings/ja.html

・・・なんていうか、和み系の作品って感じでした。

入口右手に白地に黒のフェルト(のようなもの)による太い線で描かれた女性の身体の線画の作品。
すごく分かりやすい、取っ付きやすい印象で。
僕には出力に見えたのですが、カラーで風景や肖像が描かれている作品。
こちらもやはり分かりやすい印象で、風景作品はホントにどこかしこで見かけるような親しみのある感触でありつつ、やはりオリジナリティもしっかり感じ取れます。

3点あった映像作品。
まず、湖の風景、湖面がゆらゆらと揺れているもの。
女性の身体の線画で、色っぽくウォーキングしているところ。
女性の肖像で、単純な線で構成された顔のパーツのわずかな動きで表情が変わる、というもの。
どれも数秒の繰り返しの映像(顔のパーツの作品はもう少し長かったか)ですが、特に女性が歩く作品太めの黒の線で描かれた女性の身体のラインが動く様がホントに艶かしくて、すごい洞察力だな、と感心。。。

・・・作品はどれもなんとなくほっとするような、それでいてユーモアも程よくブレンドされている感触でしたが、カウンターに置いてあった作品の価格表を見て、値段がぜんぜん和み系じゃなかったです(大汗)。。。
ざっくりいって、展示されている作品の総額でジーコジャパン不動の右サイドの加地が余裕で買える(爆汗)。

もとい。
この人の作品、さりげないところで目に入ってきて、「あ、ジュリアン・オピーだ」って気付いたらすごく嬉しいだろうな、と思います。
特に映像作品なんかが、宮島達男みたいに思わぬところにはめ込まれてたらすごく面白いですよ、絶対。

《感想リンク》
http://blog.goo.ne.jp/alfalive/e/aa231d7c7128d929d4a2bbc4e7658216
http://www.tanigami.jp/blog/archives/2005/05/_films_and_pain.html
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2005/06/skyscai_the_bat_7830.html
http://shimazoff.blog.ocn.ne.jp/first/2005/05/post_811e.html
http://d.hatena.ne.jp/kasuho/20050520
http://yoko.exblog.jp/1993243
http://shutonsu.exblog.jp/2793910/
http://indica.exblog.jp/2929941/
http://blogs.dion.ne.jp/chico/archives/1177138.html
http://souls.exblog.jp/1850775/
ギャラリー小柳にて。(5/24〜6/24)現在開催中!

奇妙なペン画とアニメーションの展示。
この展示のタイトル、「指弁(ゆびひら)」という奇妙なタイトルが気に掛かっていました。

展示内容によって変わるような変わらないような、照明も暗めの一見無機質なギャラリー。
これまでこのギャラリー小柳でダイアン・アーバス展、内藤礼展と続けて観て、それぞれ作品の形式も内容もまったく違うけど、上手く言葉にできない「こういう感じ」というのがこのギャラリーにはあるように思えます。
なのでもちろん今回も楽しみにしてました。

まず、壁に展示されている線画に描かれているのは、人間の手と足との指が変なふうにお互い繋がって生えていて、そこにさらに昆虫のパーツ、羽やら触角やらも生えている、というもの。
これらのグロテスクな遊び心満点の作品が目に焼き付いて離れないのはおそらく、指の先がリアルに描かれているため、どんなふうになっているのか、自分の手でシュミレーションしようとしてしまうからかもしれないなぁ、と(無論無理なわけですが)。

奥のスペースでは、こちらもけっこう強烈なアニメーションが。
暗闇の中、両足を肩幅に開いて仁王立ちする、身体中に鮮やかな入れ墨が入った男の後ろ姿。
その身体に描かれた入れ墨の風景の中を、鴉が飛び交い、鯉が泳いで横切る。
そして、肩に描かれた桜の花びらが1枚、また1枚といった案配で散っていき...どんどんと男の足元に散る花弁(はなびら)が積み上がり、もはや散る花弁が無くなったと思ったら今度は男の身体が指先から散っていく...こういう内容で。

なるほど「指」と「花弁」で「指弁」か、と今さらながら納得しているのですが、お互いの作品に関連性はまったく感じないものの、「振り切った奇妙さ」といった点で同じ作家ということを感じさせられました。
・・・普通思い付かない、その感性に素直に白旗。

《感想リンク》
http://blog.goo.ne.jp/pizz/e/77b22fbe618ed67e94cd62e5bce7f4bd
http://blog.drecom.jp/mimatsu/archive/156
http://ubukata.cocolog-nifty.com/my_favorite_things/2005/05/post_5e0c.html
http://aprilmarch.jugem.jp/?eid=423
巷房にて。(6/6〜6/11)

油彩の作品。
これもひとつの油彩ならではの作風。

大きな作品が2点と、小品がいくつかの展示で、多くは「空」を題材に、その空間を舞う人や風船のようなものが描き加えられてました。

・・・とにかく、まずその透明感に感動...。
入口から左手にあった、濃い青の空に雲が湧き、その空間を飛ぶ人、という作品なのですが、なによりその空の色彩、青の下地に赤も見受けられ、描かれる景色も相当に壮大なのですが、ただ純粋にその色彩感だけから伝わってくる奥行き、深く透明な色彩がどこまでも遠くへ果てなく伸びているような、そういう印象。
これは、この作品の向かいの壁に展示されていた、夜の闇の空の絵でも同様で、意識が呑まれるような深い透明感に圧倒されてしまいました。。。

なんとなく18〜19世紀のフランス絵画にも通ずるような深い透明感のある色彩表現、といった感触。。。

無論、この色彩感は小品にも存分に発揮されています。
加えて小さい分だけ作品からは壮大な感じよりも軽みが感じられて、飛ぶ人や風船の「かわいらしさ」がより印象的に映ります。

最近、新しい作家による油彩画がまた面白くなってきました。
この透明感はやはり油彩でないと表現できないと思うのです。
art space kimura ASK?にて。(6/6〜6/18)
http://www.musabi.ac.jp/ampj/2005/02watahashi/index.htm

前回に続いての若手作家を紹介する企画。

ギャラリーのスペースが手前と奥とで区切られていて、手前のスペースが橋爪彩さんの油彩を中心とした作品、奥のコーナーでは渡辺豪さんの映像作品。

橋爪さんの作品は昨年のシェル美術賞で拝見していて、とにかく強烈なリアリティで描かれた、床に横たえる女性の両足、なぜか片方だけ白と黒の縞模様の靴下を履いていて妙に色気があったのが強く印象に残っていたので、今回改めて拝見できるのを楽しみにしてました。

こちらで展示されている作品も、無論そのひとつひとつは例によって凄まじいリアリティで表現されています。強烈な空間です。
部屋の窓から半身を乗り出す後ろ姿。伝線したストッキングを履いた左足。女性の後ろ姿。。。
そんななかで、椅子に座るひとつの胴体から2組の足、白の靴下を履いているのが上、ストッキングにヒールを履いているのが下という、現実にはありえない作品があり、これはこれでリアリティからくるのとはまた別のエロスが伝わってくるようで。ハンガーにかけられたワンピースの裾から足が生えている作品も然り。

橋爪さんとちょっとお話ができて、「足」という題材については、(年齢は別として)人種や正確など、見えている部分でパーソナリティをもっとも感じないところに興味がある、ということを伺いました(違ってたらスミマセン・・・)。
個人的には、油彩の作品をいろいろと観る中でリアリティの追求というのはひとつのスタイル、ということを改めて認識させられるようで、この点においても興味深かったです(この日は素敵な油彩の作品の展示にたくさん触れることができました)。

奥のスペースの渡辺豪さんのCGによる映像作品。
かろうじて両目の瞳孔だけが色を帯びていて、他の部分、肌から髪の毛に至るまで白の女の子の肩から上の映像が、恋愛観を語ってました。
けっこう大きく映し出されていて圧倒されたのと、ひとつひとつの仕草がリアルで(言葉をしゃべる口の形に少々違和感を覚えましたが)思わず見入って(聞き入って)しまいました。
「白」という色はやはりきれいなんだなぁ、と。。。

橋爪さんと渡辺さんのセレクトについては「上半身」と「下半身」との組み合わせ、という意味合いもあったようですがそれについては少なくとも僕にとってはお二人の作品を繋げるイメージが湧かなかったのですが、そうでなくても大変興味深い展示でした。
ギャラリー椿にて。(6/6〜6/18)現在開催中!
http://kgs-tokyo.jp/tsubaki/2005/050606.htm

陶のオブジェと平面作品と。
立体と絵画とがいっしょに展示されているのですが、確かに同じ作家の作品であるにせよ、これほどまでに立体作品と平面作品とが自然に同居しているのってそんなにないと思うのです。。。

オブジェは比較的小さなもので、人の顔や手、鳥などがモチーフになっているものも多く、また、多面体の檻のようなものの中に鳥がいたり、中が空洞になっている縦に長い立方体で、その中にはいくつかのバリエーションで何かが入っていたりして(階段が一番印象的でした)、その薄いパステルカラーの明るい色彩と相まって、大変やわらかな感触、落ち着いた質感で。

そして平面作品。
描かれているものはシンプルなものが多いです。
面白いのは、ご自身で製作されて、この展示でも出展されているオブジェを描いた作品がいくつか見受けられること。
オブジェと絵画との時間的なつながりを示しているようで、このことが会場全体にやわらかな統一感をもたらす理由のひとつかも知れません。
また、平面作品にもオブジェに使われている土が下地に使用されています。パネル全面に塗り込まれた土を磨いて平らな感じにし、加えて作品の横も同様のことが施されていて、そのために壁に掛かっている平面作品がその厚み分の陶の板のようなんです(ギャラリー内のよい雰囲気に貢献しているように思えます)。
顔料は岩絵具がメイン。陶のやわらかい白系統の色彩との相性もよく、作品によっては描いた後で画面の表面全体を擦ったもののあり、そうやって画面に独特の質感が与えられているのも大変独創的です。
特に大きな木を描いた作品の質感は、擦ってできた痕が気や時の流れのようなものを連想させる感じで深く印象に残ってます。

この陶のひんやりとした質感は、この季節に拝見する作品としては涼しげで、大変心地よかったです。
・内山良子展 @GALLERY b.TOKYO(6/13〜6/18)
http://www.dragonz.com/gallery_b/exhibit2005b.html
「半草鳥の子」という和紙を使った、複数版多色刷りの水彩木版。
和紙に木版、というだけで充分ほんわかとしたやさしい質感で。
描かれているものは、多くが風景で、その延長のような抽象的なものも。
色彩、特に薄く折り重なるグレーやブラウンが落ち着いた感じで、おそらくこの感じは水彩木版ならではなのかな、と。
よいです。

・北斎と広重展 @日本橋三越本店 新館7階 ギャラリー(6/7〜6/19)
http://gendai.net/contents.asp?c=200&;id=16875
時間が充分取れなかったので数えきれないほどの版画作品はあきらめて、肉筆画をしっかりと観てきました。
北斎の食材を描いた作品、さりげなく描かれたその描かれ方にしびれました。
縦長の滝の作品はなかなかユーモアが溢れているような感じで。
広重の木々を描いた作品、その遠い景色に心が落ち着くようで。
他の関連の作家による美人画も、着物の柄は当然丁寧に描かれていたりして。
目の保養になりました。
《感想リンク》
http://blog.goo.ne.jp/harold1234/e/14cb40f34ad28b891b7940975694891d
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=279

・古山浩一展 @Oギャラリー(6/13〜6/19)
http://www4.big.or.jp/~ogallery/Pages/ryakureki/furuya.html
コラージュ作品が面白いというのは、すごいことだと思うのです。
全体としては何が描かれているのかつかみ所がないといえばないのですが、それでも少し離れたところから作品全体を眺めてみると、貼られた写真や何かの印刷物、数字、絵具がたれてできた線、などなど、無意識と故意とが絶妙に重なりあっている感じがして、妙に説得力がありました。
小品もユニーク。
ミヅマアートギャラリーにて。(6/1〜7/2)現在開催中!
http://www.mizuma-art.co.jp/_archive/200506_aoyama_j.htm

これはヤバいね。これは。

暮れ行く空、そこに浮かぶ雲の筋、そしてなにより広がる夕陽のオレンジのグラデュエーション、その下に広がる街並。これらが丁寧に再現された街の夕景。
毛並みの一本一本が描かれ、やけにリアリティのある、何かを待つ、もしくは遠くを眺めているような、実物大の犬の後ろ姿。
真っ暗闇に浮かび上がる髑髏。
すごくエロティックながら、この中にあってはそれほどのインパクトを感じない、ピンクの女性下着。
榎倉康二を連想させるような、大きな紙に飛び散った泥のしみ。大小の染みそれぞれが、乾いた外側の部分は濃く、内側は薄く、といった案配にリアルに描かれていて、すごい説得力!
暗闇に浮かび上がる木のシルエット。天上に向かうにつれてだんだんと濃さを増す闇夜の表現がカッコ良すぎてもうたまらない。

奥のスペースには小品が。
スナップ写真を同じ大きさで再現した作品が数点。
標識に書かれている文字までもが忠実に再現、しかも、遠い景色と近くのものとを、凹凸感を付けてしっかり表現されているのにも脱帽。
昆虫や小動物の作品もリアリティにあふれていて、これまた感服。

これがすべてミシンでの刺繍で描かれているんです!
これが驚かずにいられるかってんだこの野郎!
ちなみにポリエステル、もしくは紙に刺繍されています。
作品によっては(たぶん)黒系のパステルで下書きされているものもありますが、それぞれおそらく普通の画材で描くのもけっこう難儀と思われるような細かい描写が、細い刺繍糸で再現されています。
少し前に同ギャラリーで青山さんの作品は1点だけ拝見していて「スゴイもの創る人がいるんだなぁ」と感心したことは覚えていたのですが、今回の個展を拝見して、いやもうその「仕事っぷり」には頭が下がります。

幸い会期はまだしばらく続きます。
これは観ないと損かと。

《追伸》
泥の染みだと思っていた作品は、コーヒーの染みとのこと。
良く考えると展示タイトルに「コーヒー」ってあるわけで。
Bunkamuraザ・ミュージアムにて。(4/15〜6/12)
http://www.bunkamura.co.jp/museum/event/belgium/index.html

会期終了ギリギリで行ってきました。

「象徴派」とい言葉が気になって。
純粋に言葉の響きだけだと「印象派」と似ているのでどうしてもそっちの方にイメージが引っ張られてしまってたのですが、この展示の前に庭園美術館でアンソール展を観ていたこともあって、思いのほかすんなりとこの「象徴派」という言葉が示すものを自分なりに掴めたような気がします...当たり前なのですが「何かを象徴している」作品群。
もっともその時代のベルギーの作家にスポットがあたっているのでその時代の風景画や日常を描いた作品もそれなりに展示されていました。

印象に残った作家・作品。
レオン・フレデリックの風景を描いた小品、描かれるモノとモノとの境、つまり色と色との境があいまいな淡い色彩。
また、「三姉妹」の、その姉妹が身に付けている服の赤の鮮やかさも鮮烈な印象。
グザヴィエ・メルリの「我が家の玄関」・・・玄関がどこなのかは分からなかったのですが(汗)、窓だけに明かりが灯る夜の洋館、その外で壁際の台のようなものに座る女の子。暗い色彩のなかにそういったものが浮かび上がっていて・・・。
フェルナン・クノップフの一連の風景画、パステルや木炭、鉛筆で描かれた風景の多くは湖面に映り込む建築物までが丁寧に描かれているのですが、その画材のふわっとした質感でやさしい、落ち着いた感じが心地よく、見入ってしまいました。
ウィリアム・ドグーヴ・ヌンクの「夜の効果」は全体に濃い青があしらわれたパステル画で、この青の青さがなんとも深遠です。
全体的にシンプルな感じがしたレオン・スピリーアルト。

ここでのアンソールは風刺画が5点のみでした。
しかし、先の庭園美術館での回顧展でのあの作風の変遷を思えば、ここに展示されている作家もそれぞれ大きな変化を遂げてきたのかもしれず、そう思うともっと深く触れてみたい気もします(ここで初めて拝見する作家が多かっただけに)。

「象徴派」ということについては、その作品の象徴するもの、大きく分けるとだいたい「風刺」と「ファンタジー」といった感じなのですが(宗教についてはよく分からないので)、どちらも少なくともこの時の僕の気分に合わなかったかな、と。
・・・やっぱ夜に観に行ったほうが良かったかな(深く、美しい作品が多かっただけに)...。

《感想リンク》
http://twars.cocolog-nifty.com/twarslog/2005/04/post_6d6b.html
http://pocketwarmer.blogzine.jp/movie/2005/04/post_a396.html
http://blog.so-net.ne.jp/wisteria/2005-05-13
http://blog.goo.ne.jp/harold1234/e/170197f8e14bcd8fc87c2514bd9e5ba9
http://yaplog.jp/purple_shikiko/archive/37
http://chakai.blog7.fc2.com/blog-entry-214.html
http://blue.ap.teacup.com/tokizawa/60.html
http://crann.exblog.jp/1879358/
http://a-third.cocolog-nifty.com/th/2005/05/post_4237.html
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=235

《議題》
「象徴派」と「印象派」がごっちゃになってる人が僕だけな件について

あははははははは。 orz
・金子透展 @GALERIE ANDO(6/7〜6/25)
アルミニウム板に彩色された作品ですが、観た感じは錆びた鉄の板という、物質感がまずダイレクトに伝わってくるような作品で、時間が経つとだんだん、遠い景色(もっと空間的、宇宙的な)に見えてきて、不思議な感触でした。

・ル・コルビュジエ版画展 手へのオマージュ -Hommage a la main @Art-U room(6/1〜6/22)
http://www.mmjp.or.jp/art-u/contents/show/tokyo/2005_6/2005_6.html
以前ときの忘れものでコルビジェのリトグラフを観た時はマティスっぽさを感じたのですが、ここで拝見した作品はもっと大胆な感じで。
それでもバランス感が絶妙によいような気がするのは、やはり建築家ならではなのかな、とも。

・染谷香理展 @ぎゃらりぃ朋(6/10〜6/18)
http://www.remus.dti.ne.jp/~anne/tomo.html
日本画です。
杉の板に彩色された作品があり、まずそのアイデアがユニークで興味深かったです。
今回が初めての試みということだそうで、例えば板と絵の色のバランスなどがもっと突き詰められれば更に面白くなる気がして、次の展示が楽しみです。

・興津眞紀子・丹羽康子展 @ギャラリー椿GT2(6/6〜6/11)
http://kgs-tokyo.jp/tsubaki/2005/050606gt.htm
興津さんの作品は、作品ごとに統一感のある色彩で、葉脈まで丁寧に描かれた葉や水滴を織り込んで爽やかなファンタジーといった風合いが印象的で、丹羽さんの作品は、一気に描き上げたようなものすごいスピード感を感じる抽象画。
お二人の作品が織り成すコントラストも不思議と心地よかったです。

・フォト・ドキュメンタリー「NIPPON」2005 井上志保 「少年Aの風景」 @ガーディアン・ガーデン(6/6〜6/11)
http://www.recruit.co.jp/GG/exhibition/2005/gg_0506.html
例の少年犯罪の現場を撮った写真展。
陽射しを受けた風景は、その中で浮かぶシャボン玉と共にどれもきれいに撮られていたのが印象的で、逆説的にこの事件がこういう場所で起こったのだなぁ、と考えさせられるような・・・。

・竹崎勝代 木版画展 @シロタ画廊(6/6〜6/18)
http://gaden.jp/shirota/2005/050606.html
和紙に複数版多色刷りの幾何学模様の木版画の作品。
木版画と和紙との組み合わせだけでも充分に暖かみがあるのですが、竹崎さんの作り出す「模様/柄」もまた、人の手の温もりというか、アナログな感じがさらにやさしい印象を与えているようで。

・ミズ・テツオ 1974-1987 @ごらくギャラリー(6/10〜6/21)
http://www.h6.dion.ne.jp./~goraku.g/MizuTetsuo_2005/MizuTetsuo_2005.html
ミズさんの旧作を一挙に集めて展示した企画(といっても初めてお目にかかる作品でしたが)。
深い赤や緑の油彩の作品が多いのが印象的で、心の深層に沈み込むような、深い質感で。
現在はカラフルな作品を製作されているそうで、この秋にどう会場で新作展があるとのことでした。楽しみです。

・堀井聰展 @東邦アート(6/6〜6/11)
http://www.tohoart.com/
金魚などがモチーフとなっていて、金泥・銀泥が大胆に使われているので一見日本画なのですが、油彩とのこと。
あらためてみてみると、なるほど洋画の質感。

・播磨 みどり “縫合” @Gallery Jin(5/27〜6/26)
http://galleryjin.com/exhibitions/index.html
申し訳ない、面白さ、良さがぜんぜん分かりませんでしたヽ(`Д´)ノ

以下の展示についてはあらためて。
・ベルギー象徴派展 @BUNKAMURA ザ・ミュージアム(4/15〜6/12)
http://www.bunkamura.co.jp/museum/event/belgium/index.html
・青山悟「空気 コーヒー 東京の朝」 @ミヅマアートギャラリー(6/1〜7/2)
http://www.mizuma-art.co.jp/_archive/200506_aoyama_j.htm
・新井コー児展 @なびす画廊(6/6〜6/11)
http://www.nabis-g.com/exhibition/2005/arai-k.html
・木村繁之展 @ギャラリー椿(6/6〜6/18)
http://kgs-tokyo.jp/tsubaki/2005/050606.htm
・中村路展 @巷房(6/6〜6/11)
http://www.spinn-aker.co.jp/kobo/k-guide.htm
・αMプロジェクト vol.2 渡辺豪×橋爪彩展「シークレットガールズ up and down」@ART SPACE KIMURA ASK?(6/6〜6/18)
http://www.musabi.ac.jp/ampj/2005/02watahashi/index.htm
・束芋展−指弁 @ギャラリー小柳(5/24〜6/24)
・ジュリアン・オピー展 -Films and Paintings- @SCAI THE BATHHOUSE(5/12〜6/18)
http://www.scaithebathhouse.com/main/03exhibition/data/FilmsandPaintings/ja.html
巷房にて。(5/30〜6/4)
http://www.kgs-tokyo.jp/interview/2005/050530c/0530c.htm

銅と真鍮によるオブジェ(一部、木材などの他の素材が使われています)。

明るい金色をした真鍮。
それと比べると、落ち着いた渋い色調の銅。
おたがいの材質が引き立てあい、大変納まりがよく落ち着いた、それでいてすごくファンタスティックでさまざまな想像が頭をよぎる、大変楽しい作品たち。

乗り物系。
壁にかけられた作品で、船のようなものは、銅製の本体からたくさんの羽根が。側面に広げられた扇状のものや、前後と船の上にある風車状のもの(実際には動かないように固定されていましたが)を観て、これらの羽根が風を受けて船が空を進む姿を想像...。
壁に取り付けられた小さな木製の台の上には、羽根と車輪が付いた車。手のひらに乗るくらいの大きさで、これがもうめちゃくちゃかわいい!
建物系。
銅の台の上に真鍮の塔。その内側にちいさな家のようなものがあったりします。
中には、いちばん上に大きな歯車が乗っかっているものも。
こちらもそれぞれ楽しげで。。。

作品を拝見して、例えば塔を形成する部分や車に付いている羽根、これらは細い真鍮の棒で組まれたような感じなのですが、実際は板から穴をくり抜いて、檻状になるように細く残していくとのこと。
よく見ると確かに微妙にまがっていたりして、それはそれでハンドメイドの暖かみがこういうところから伝わってきます。
また、一部の大きなネジは服部さんご自身が製作されているそうで(そういえば中学の技術の授業でやったことを思い出したり)。相当の部分がハンドメイドで、これにはかなり驚きました。

服部さんからは、金属の素材の面白さ、奥深さ(今回使用されている真鍮や銅にとどまらず、鉄やアルミニウムについても)なども伺えました。
今回はそれぞれの作品を展示されているかたちで、それぞれの作品をじっくり細かいところまで観ることができて大変興味深かったのですが、これらの作品がひとつの世界に組み込まれたインスタレーションで拝見できたらまた違った面白さが出るのかも、と、こういう方面にまで想像が向かってしまいました。

たった一週間の展示というのは惜しいです・・。

《感想リンク》
http://31a0334.blog5.fc2.com/blog-entry-23.html
新生堂にて。(6/8〜6/18)
http://www.gaden.jp/shinseido/2005/050608.html

C-DEPOT展と同じ日に始まる個展。
初日に観ることができました。

線画に薄く色づけされた人物画。
人物の表情は淡白で、でも静かに物思うようなやわらかい感じで。
こういう質感はどこかで体験したような・・・と頭を巡らしてみて、藤田嗣治のそれに近いのかなぁ、と思い当たったのですが...。
・・・なので、てっきり油彩と思って拝見してたのですが、絹布に岩絵具で描かれた作品でした。

描かれる人物は、ソファに寝そべっている人だったり、老姉妹だったり...。
その存在を主張するような人はひとりもいなくて、ゆっくりと過ぎる時間の中にいるようなひと、という感じです。
薄いベージュ色の背景と合わせて、大変地味な印象でした。
繰り返しになってしまいますが、やわらかな表情の人物画なのでその地味さも心地よいです。
最初のインパクトこそ強くないですが、こちらも作品のゆっくりとした時間に浸ってみて、よりその味わいがましたような気がしました。

・・・宮永さんの風景画も観てみたいような気がします。
art space kimura ASK?にて。(5/23〜6/4)
http://www.musabi.ac.jp/ampj/2005/01kondou/index.htm

油彩の風景画。
ただ、一筋縄ではいかない、強烈な個性を放っている、大変見応えのある展示でした。

描かれているものは、大木だったり、山と湖が見える風景だったり。
使用されている色が実際の風景と違っていて、観た限り3〜5色と少なく、その色も例えば赤、青、緑だったり、黄、茶、赤、緑だったり...お互いに反発しそうでありながら、それがかえってお互いの色を際立たせているようにも思えました。
そうやって描かれた作品は、カラーでネガとポジを反転させたような感じで、本来のとは基本的にかけ離れた色が使われているのが余計にそういう印象を与えているように思えました。
至近から見ると確かに油絵具なのですが、ちょっと距離を置くと、入口から右手すぐに展示されていた山の絵はまるで岩絵具のようで、他の作品はリトグラフ、あるいはシルクスクリーンのような感じで。

大変新しい感性を感じましたが、一方で「和」の感じも同時に持ちました。
ハイブリッドな横山大観、というとちょっと違うかも知れないですが、作品のスケールの大きさは相当なもので、加えてその独特の色彩感で細かいところまで丁寧に再現されているところや構図的なものにも説得力があるように思えました。

会期ギリギリで拝見できて、本当によかったです。
またこれからもいろいろと拝見したいです。

《感想リンク》
http://www.art-yuran.jp/2005/06/post_52fe.html

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