☆マークは芸力(http://geiriki.jp )でレビューしてます。

《2/13》
☆はるいろ♪展(2/13-2/18)
@千疋屋ギャラリー
http://www.senbikiya.co.jp/gallery-Frameset.htm
☆西川芳孝展(2/13-2/18)
@アートスペース羅針盤
http://rashin.drawing.jp/ex/2006/0213/index.html
・名古屋芸術大学学生選抜展(2/13-2/18)
@ギャラリー山口B1F
http://www.galleryyamaguchi.net/
☆鴻崎正武 個展(2/13-2/18)
@銀座スルガ台画廊
☆阪本トクロウ展 - 読みかけの小説(2/13-2/18)
@ギャラリーゴトウ
http://www3.ocn.ne.jp/%7Eg-goto/fset/exfset.html

《2/14》
・鈴木 海 展(2/14-2/19)
@ars gallery
http://www.a-s-o.jp/gallery/scadul_s.html

《2/18》
☆聖曲の地へ 新山 拓 展(2/6-2/18)
ギャラリー白石
http://www.gallery-shiraishi.co.jp/popup.html
☆新井ちひろ 磁土の万華鏡展(2/13-2/18)
@Ecru+HM
http://www.ecruplushm.com/exhibition/2006/0213_arai_chihiro.html
☆小山暁子(2/13-2/18)
銀座小野画廊2
☆橋本麻希展(2/13-2/18)
@Gallery Q
☆東園基昭展(2/18-2/25)
@ぎゃらりぃ朋
☆KENGO KITO + ROBERT PLATT(2/1-2/28)
@ギャラリー小柳
http://www.gallerykoyanagi.com/
☆羽田美奈 展(2/13-2/18)
@シロタ画廊
http://www.gaden.jp/shirota/2006/060213.html
☆こんどうあや個展 「BAROQUE PIANICA」(2/16-3/14)
@B GALLERY
http://www.beams.co.jp/beams/b_gallery/b_gallery_sheet/kondo2.html

《2/19》
・鈴木卓 展 ― 黒錆の陶 ひらくかたち ―(2/3-2/28)
@ガレリアセラミカ
http://www.inax.co.jp/Culture/2006_02/c_02suzuki.html
・-    遅筆堂文庫展 −井上ひさし 14万冊の蔵書の中から−(2/3-2/26)
@NIKIギャラリー冊
http://www.satsu.jp/
・須田国太郎展(1/13-3/5)
@東京国立近代美術館
http://www.momat.go.jp/Honkan/Suda/index.html
・卒業三人展 一同窓生三人による書作展一 阿部きよの・梅田悠希・堺 育野(2/17-2/22)
@ギャラリー52
http://homepage3.nifty.com/g52/
・鈴木大知展(2/14-2/19)
@ギャラリーf分の1
http://home.att.ne.jp/air/galleryf-1/
・アリタマサフミ×美篶堂 世界を旅する装幀展(1/31-2/19)
@美篶堂
http://www.misuzudo-b.com/
・カゲロウ2 ジョーン・リー個展(2/14-2/19)
@Gallery J2
http://www.g-j2.com/
☆−自然の息吹− 野地美樹子 日本画展(2/15-2/21)
@上野松坂屋 南館7階 美術画廊
http://www.matsuzakaya.co.jp/garou/ueno/
・吉田恵美子・松川津禰子二人展(2/17-2/27)
@書肆啓祐堂
http://www.keiyudoh.com/
なるべく月曜日に書こうと思ってはいるのですが、ちょっと自転車の漕ぎ過ぎなどで疲れが溜まってたりしまして...。
例によって、☆は芸力(http://geiriki.jp )でレビューしてます、あるいはこれからレビュー記事が掲載される予定のものです。ぜひそちらもご覧ください。

《2/6》
☆高島圭史展
@銀座東和ギャラリー(2/6-2/11)
☆泉東臣 個展
@スルガ台画廊(2/6-2/11)
☆櫻井美幸“盲亀の浮木”
@ギャラリー本城(2/6-2/25)
http://www.galleryhonjoh.com/htm/jp/sakurai_2006.htm

《2/7》
・鈴木美貴子展 「metal illustratuon」
@ギャラリーハウスMAYA(2/6-2/11)
http://www.gallery-h-maya.com/
・立岩朝子 個展「MADE BY ASAKO TATEIWA」
@ars gallery(2/7-2/12)
http://www.a-s-o.jp/gallery/

《2/9》
・川鍋友美子
@MUSEE F(2/6-2/11)
http://omotesando-garo.com/museef/MF.html
☆アマヌマ アキ ガラスの影絵展
@表参道画廊(2/6-2/11)
http://omotesando-garo.com/link.06/ama.html

《2/11》
☆羅針盤セレクション HOPE 2006 ー様々なニホン画ー part 2
@アートスペース羅針盤(2/6ー2/11)
http://rashin.drawing.jp/ex/2006/0130/index.html
・KURITA ERIKO EXHIBITION
@store & gallery S.c.o.t.t(2/8-2/26)
・ドコニデモアルカタチ ドコニモナイモノ 展 −Takashi Umekawa Design Exhibition 2006−
@GALLERY-KOWA(2/11-2/19)

表参道ヒルズってジュリアン・オピーでいっぱいですね。好きな人には堪らないかも。

《2/12》
☆大竹敦人展 視点と視線の海へ
@遊工房アートスペース(1/28-2/12)
http://www.smallworld.co.jp/plaza/youkobo/pages/winpage.cgi?pid=06012801&;mode=1
☆第3回 無限展 -日本画-
@もみの木画廊(2/8-2/14)
http://home.catv.ne.jp/kk/mominoki/cof/dm/060208i.html
☆石田尚志展
@UPLINK GALLERY(2/11-2/18)
http://www.uplink.co.jp/gallery/log/
☆マークは「芸力」のR&Rにレビューを書いてます、よろしかったら。
http://homepage2.nifty.com/geiriki/ten/index.html

・児嶋サコ『Afternoon Of Atelier -マリの部屋-』《1/31》
@UPLINK GALLERY(1/28-2/8)
http://www.uplink.co.jp/gallery/log/000991.php
・Project the Projectors 2006《2/5》
@旧関東財務局(1/28-2-5)
http://www.project-the-projectors.jp/

《2/4》
☆大和由佳 展
@INAX GALLERY 2(2/1-2/25)
http://www.inax.co.jp/Culture/2006_02/2_02yamato.html
・羅針盤セレクション HOPE 2006 −様々なニホン画− VOL.1
@アートスペース羅針盤(1/30-2/4)
http://rashin.drawing.jp/ex/2006/0130/index.html
☆今津 景 展
@GALLERY b.TOKYO(1/30-2/4)
http://www.dragonz.com/gallery_b/exhibit2006a.html#imazu
・日芸版画修了卒業制作展
@ギャラリー川船(1/30-2/4)
http://kgs-tokyo.jp/kawafune/2006/060130.htm
・曽我部建展
@ギャラリー銀座フォレスト(1/30-2/4)
・野崎文乃展
@ギャラリー銀座フォレスト・ミニ(1/29-2/4)
☆渡瀬愼也展 rule on rule
@SOL(1/30-2/4)
http://www005.upp.so-net.ne.jp/SOL/EXHIBITION/2006/20061watase.htm
☆黒木美希 -木版画・コピーによる和紙のコラージュ-
@シロタ画廊(1/30-2/10)
http://www.gaden.jp/shirota/2006/060130.html
・北村 麻衣子 展
@Oギャラリー(1/30-2/5)
http://www4.big.or.jp/%7Eogallery/Pages/ryakureki/kitamu.html
☆大矢裕美 弓矢朝子「二人展」
@exhibit Live & Moris(1/30-2/4)
http://artlive.cool.ne.jp/2006/ooya_yumiya/ooya_yumiya.html
・西岡兄妹展 絵本『死んでしまったぼくの見た夢』(パロル舎)新刊『子供の遊び』(青林工藝舎)出版記念
@span art gallery(1/23-2/4)
http://www.span-art.co.jp/fset_ex/fs_ex_060123.html
・龍 加藤和
@フタバ画廊(1/30-2/5)
☆小林 夏奈子 展
@ぎゃらりぃ朋(2/3-2/11)
・第41回 昭和会展
@日動画廊(2/1-2/7)
http://www.nichido-garo.co.jp/exb.files/exb.html
☆古賀 充 展
@(g)(2/2-2/22)
http://www.gooddesigncompany.com/gallery_g/
「作家の卵展」に出展されているアーティストの作品が観られる展示のうち、近々に開催(あるいは開催中)のものをピックアップ。

・瀧下和之
「桃太郎図」展 Muka^shi Mukashi。
@シブヤ西武 B館8階 美術画廊(1/24〜2/5)
https://www2.seibu.co.jp/wsc-customer-app/page/020/dynamic/item_details/ItemDetails?item=I000023141

・泉東臣
泉東臣 個展
@銀座スルガ台画廊(2/6〜2/11)

・川本淑子
第3回 無限展 −日本画−
@もみの木画廊(2/8〜2/14)
http://home.catv.ne.jp/kk/mominoki/cof/dm/060208i.html

・野地美樹子
−自然の息吹− 野地美樹子 日本画展
@上野松坂屋 南館7階 美術画廊(2/15〜2/21)
http://www.matsuzakaya.co.jp/garou/ueno/index.html

・金丸悠児
金丸悠児 −Cactus 2−
@四季彩舎(2/20〜3/1)
http://www.shikisaisha.com/kanamaru-shoukai1.htm

・三枝淳
三枝淳 個展
@銀座スルガ台画廊(2/20〜2/24)

・第54回東京藝術大学卒業・修了作品展
@東京芸術大学(2/22〜2/26)
http://www.geidai.ac.jp/topic/sintyaku_kiji/20051227/index.html

それぞれ、「芸力」の「展力」のページでも紹介していきます!
http://homepage2.nifty.com/geiriki/ten/
おぶせミュージアムにて。(1/27-5/9)
http://www.town.obuse.nagano.jp/bijutsu/chinami/chinami.html

芸大デザイン科描画・装飾研究室の出身の作家がずらりと揃った展示。
ずいぶんと前からこの展示のことはいろんな方から伺っていたので楽しみで。さすがにこれだけ好きな作家が揃い、それぞれの大作が出展されるとあって必ず行くつもりでいましたが。どうせ行くなら作家が全員そろってアーティストトークが開催される初日に行こう、ひとりくらいそういう酔狂がいてもいいじゃないか、と思い立ち、初日に行ってきました。

面識のある方も多いので、「なんでいるの?!」と驚く方も多数、そりゃそうだろうな、と(笑)。
また、お目にかかりたかった方、なかなかお目にかかる機会がなくて、久々にお会いできた方もいっぱいで。

というわけで、今回はすべての作品のレビューに挑戦。

・岡本雄司「四谷駅 四谷口」「四谷駅 赤坂口」
年末の日本橋高島屋でも拝見した、和紙に黒のみの木版画で、四谷駅のふたつの出口の断面図を描いた作品。
ユニークな構図、木版画の素朴な風合い、凸版でありながらそのほとんどが線で再現されている独特なアイデアが楽しいです。
ホームはもちろん駅ビルにいたるまで(ゴテイネイにお手洗いさえも!笑)、さらには新宿通りで信号待ちしている自動車までもがきっちりと織り込まれていて、その徹底ぶりに感服。
そして駅で時間を過ごすたくさんの人がシルエットになっていて、それがまたひとつひとつに表情が出ていて、なんともいい味わいです。

・高岡香苗「瞬く花」
縦長の画面いっぱいに咲く2輪のおおきな花。モザイクのような花の中心部、濃い藍色の花びら。
紫から赤にかけてのグラデュエーションが鮮烈な背景。
花と背景の強い色彩が、共に目に焼き付きます。
相当に濃い世界観、雪も溶けるんじゃないかっていうくらいのエネルギーを感じます。
伺うとこのシリーズは他にもあるそうで、ひとつの空間で展示される機会があれば、ぜひまとめて拝見してみたいです。

・田宮話子「香久の国」
蓮の花の柄がはいった衣装を纏う3人の女性のゆるやかな舞い。
素朴な表情が印象的です。
また、青地に金箔が貼られた背景からは、夏の夕暮れが連想されます。
田宮さんのご出身が静岡で、地元での展示の際に「みかん」をテーマにして制作されたそうで、その取材の過程で「古事記」にある香久の国の話、香久という常世(楽園)にあるみかんのエピソードからアイデアを得て描かれている一連のシリーズを制作されているとのことです。

・今泉尚樹「符韻」
雪に埋もれた稲の切り株が並ぶ、縦長の作品です。
田圃に積もった雪の質感がやわらかく表現されていて、さらに夕刻の陽射しを受けて白が白でなくなっている様子、淡くピンク色に染まっていて、そこに若干の金、青が加えられ、自然がさりげなく見せる神々しさがていねいに再現されているようでもあります。
小さい頃、田圃に囲まれた田舎で育ったので、なんとも懐かしい気分にさせてくれます。やさしい作品です。

・小林英且「記憶 〜刻〜」
リンゴと野沢菜とおやきが大好きな(笑)小林さんの作品に登場するのは、古代魚と裸婦。
裸婦からは生命の強さ、今を呼吸するものの象徴のようであり、裸婦の頭上に浮かぶ古代魚はその達観しているかのような表情から太古から続いている時間の雄大さをシンボリックに表しているような感じがします。
女性の背後には木のような影、古代魚の背景も暗く、それ以外はクリーム色で、下地に石膏が使用されていることもあり、なんとなく「化石」を連想させるような質感で、古代魚の鱗の1枚1枚や裸婦の髪の流れなどが立体的に表現されていて、遠目で見るとダイレクトに絵の迫力を、至近で見るとひとつひとつの繊細な表現を堪能できます。

・酒井一「譜」
暮れる陽の光を映して金色に輝く水面、そこに浮かぶ5匹の鴨と、並ぶ杭のひとつに佇むカワセミ。
上野での酒井さんの個展では、花や食材たちが絵に描かれている喜びを発散しているかのような力強さを感じたのですが、今回拝見した作品からはむしろ、ゆったりとした、静かな印象を受けました。
ふたつの画面で構成されている作品ですが、それぞれ単体で眺めてもしなやかに絵の世界へ入っていけるような自然な構図になっています。
酒井さんのこの作品に描かれているような風景、何も考えずにいちばん落ち着けるような気がします。そういう風景をやさしい質感の絵で表してくれた酒井さんに感謝、です。

・高橋浩規「花菖蒲の頃」
画面上方にはあざやかな青の菖蒲が咲き乱れ、下方、手前には青い髪の女性の半身像が、銀とグレーの背景に、白く描かれた花2輪とともに描かれています。
高橋さんの作品を拝見する度に感じることですが、それにしてもこの色彩の高貴さといったら。。。
本来の色を敢えて高橋さんのフィルターを通して違う色で表現されていて、今回の作品でいえば、菖蒲の葉の色を抑え目にすることで菖蒲の青がより鮮やかに感じられたり、おそらく本当は色がついていたであろう2輪の花を白く描くことで女性の存在に奥行きが出てきていたり...さらに色彩に加えてフラットな画面と描かれるもののかたちがはっきりとしているところから、尋常でない「キレ」のようなもの、背筋の伸びるような「張り」が伝わってきます。

・阿部穣「蓮池遊魚図2006」
キャンバスと岩彩との組み合わせ、さらに画面に絵具を重ねるだけではなくて削る、洗い落とすなどの手法も取り入れられて得られた独特の風合いからは、人の手の感触を感じます。
画面に登場するのは鯉、金魚、蛙、亀、メダカ、オタマジャクシ、蓮の葉、花。ゆったりとしたおおらかさと、たくさんの生き物による賑々しさと。そういったなかで蛙たちは蓮の花の上にいて高見の見物みたいだったり、亀の甲の上にちゃっかり乗っかってたりしていて、絵としての至極真っ当な雰囲気のなかにあってこのユーモアがさりげなく効いてます。

・瀧下和之「桃太郎図ノ弐百弐・鬼ケ島で×××。」
おなじみの桃太郎図、昨年のギャラリー和田での個展で発表された、パネルの横の総延長が13mを超える作品です。鬼の数は総勢63体、そして犬、猿、キジ。
これだけの鬼が登場しているとさすがにさまざまなことをやっていて、端から端まで観るのにはそれなりに時間がかかるのですが、むしろもっと続きを観たくなるような楽しさに溢れています。またアクリル絵の具で描かれていながら、取り上げられているテーマとともに風合いもいわゆる日本画っぽいのもユニークです。
この桃太郎図シリーズは当面の目標は伍百だそうで、現時点で参百が見えてきたくらいですから(2/5までシブヤ西武で開催中の個展で最新作が観られます!)、まだまだ楽しませてもらえそうです。

・濱岡朝子「Utopia」
濱岡さんの描く世界って、ケーキのような感じがします。
ケーキを前にしたときの、童心に帰って純粋に嬉しい楽しい気分になったときと近い感覚。。。
不思議の国の街並みのようなかわいい作品で、カーキ色の背景に、金色の漆喰で固められた色とりどりのレンガでできたコミカルな風合いの家が黒の地面に並び、その煙突からは白や薄いピンクの煙がもわっと膨らむように出てきていて。
それぞれの形がすべて丸みを帯びていて、そのやさしい雰囲気が、ほっこりと心を和ませてくれます。

・深海武範「百草園」
マネの「草上の昼食」を大胆に引用したユーモア溢れる作品です。
野球のユニフォームを着た人となぜか裸の人とが林のなかの草むらの上で車座になっています。
作品だけを見るといろいろと突っ込みどころが満載で楽しいのですが、マネへのトリビュートの意味や、ユニフォームについても、現役であること、絵を描き続けるという意志の現れ、というのもあるそうで。

・冨田典姫「菅原道真公像」
牛にまたがる道真公を描いた作品。
紫の、模様が入った着物といい、鞍のあざやかさといい、背景の松といい、ひとつひとつが丁寧に、正確に描かれているような感じです。
現存する古い日本画も、完成したばかりの状態はきっとこれくらいフレッシュな色彩だったんだろうな、というふにも想像が膨らみます。

・山本陽光「時は満ちた、行こう、この先へ!街はこんなにも美しく輝いて見えるのだから…(祝福された出発)」
全体の色彩は濃い青、夜を連想させてくれる色なのに、すごく明るい印象です!
画面の中央には夜の空に浮かぶ大きな船、その眼下に広がる夜の街の景色。スミレが咲き、蝶も舞う。
曲線と点とでいろんな形を表していて、その曲線にはユーモアさえ感じます。
そして子供の頃、クレヨンで絵を描くのがすごく楽しかったことを思い出します。
充分に大きな作品ですが、この10倍くらいの大きさでも観てみたいなぁ、と。その大きさでこの絵を動かしてみたいなぁ、と。いろいろと想像が膨らみます。

・渡邊史「澹涵 Tankan」
青い水面に赤や緑が滲むように入っていて、タイトルの「さんずい」がついた文字そのままに、水のイメージを感じます。
その揺らぐような青の色彩のうえに、複雑に絡み合うような曲線がいくつもあって、そのひとつひとつは紐のよう。その曲線によって、平面の青にさらに揺らぎがあらわれ、水面にも奥行きが生まれて、幻想的な感じさえしてきます。
それ以外は何もない、ただただ水を思い浮かべる作品ですが、だからこそユニークな可能性が秘められているような気がしていて、たとえばこの作品を背景に、その手前に水に関係のあるオブジェを配置したらそれだけで素敵な空間ができるような気がします。

・岡部忍「Untitled」
2点組、教会の絵が同じ構図、違う色彩で描かれた油彩の作品です。
それぞれ「昼」と「夜」を連想させる色彩となっています。白で明るい様子を、茶と青とで夜の闇を。
これまで岡部さんの作品を拝見してきて、「描かない」人だなぁ、という印象だったのですが、今回拝見した作品はこれまでになく「描いてる」感じがしました。それでも、僕が岡部さんの作品が好きなところでもあるのですが、描かれている昼と夜の教会はやはりイメージのなかでの風景のような感触があって。

・金丸悠児「時を運ぶ者」
しらみず美術での個展で発表されたこの作品がふたたび、しかも広い空間で観られることの幸せ。。。
展示されているのはいちばん大きな展示室の中央に設置された壁で、入口正面から見えるようになっています。この展示室に入るとき、この悠然としたおおきな古代魚が迎えてくれるのです。
より大きな空間を与えられて、さらにその存在をしっかりと感じさせてくれるようでもあります。金丸さん独特の色彩感と質感でていねいに描かれた古代魚、タイトルのスケールの大きさそのままに、時間だけでなく空間さえもゆったりと運んでいるかのようです。

・野地美樹子「秋韻」
画面いっぱいに広がる、いちょうの樹。
野地さんの「樹シリーズ」のなかでもいちょうが取り上げられている作品はこれまでにも拝見していますが、僕が観た多くは細くまっすぐな幹のいちょうの樹でしたが、今回出展された作品では、力強くうねる太い樹の幹から枝が四方に広がり、白から淡い黄色にかけてのやわらかなグラデュエーションで描き分けられた色付いたいちょうの葉が1枚ずつていねいに描かれています。その大きな樹のなかに2匹のリスがいて、それを見つけたときの嬉しさも。

・八木明知「風」
広い画面いっぱいに広がるベージュ色。
どこか土っぽい、あたたかみのある色彩感で、その画面の中央を横切るように、黒地に金箔が施された、うねる太い線が1本。
横方向への力強い動線、不器用なかたちをしていますが、ゆったりと流れる大河のような大きなイメージが浮かんできます。

・田中怜「触情」
一昨年はじめて「やぶのなか」展で拝見したときもそうでしたが、とにかくこのなかにあってすごくアウトサイダー的な質感を強烈に放っています。
ちいさな画面が十数点、縦横に並べて展示されている、無彩色の作品。ペン先にインクをつけながら、感情を排するようにひたすらペン先を画面に当てて点を打ち続ける、という、非常に無機的な作業で制作された作品が、なぜこれほどまでに有機的なものの印象を与えるのだろう...不思議です。
観ていて無意識に作品に近付いて、至近でじっくりと凝視してしまうほどに繊細な点の集合体。インパクトの強さは相当なものです。

・永井夏夕「昨日みた夢」
今回の展示のなかのハイライトといってもいいかもしれない、スケールの大きな作品です。
縦長の広い画面、下方には葉やシダで黒く覆われ尽くされた、これまでも永井さんの作品のなかで度々拝見してきた廃虚っぽいコンビナートがあって、残りの画面はいっぱいに広がる青空。夏を思わせる力強い雲が浮かぶ様子も壮観で、ぐーっと画面の奥のほう、はるか遠くまでその空は続き、彼方ではオレンジ色に暮れ始めています。
空を眺めて感動できることは幸せなことだと思うのです。あらためて、そういうことに気付かせてくれる作品です。

・林由未「ほころびの街」
今回のなかで、唯一の立体の作品です。
馬と馬車が一体になった乗り物に、肌の色が青みがかったグリーンで、頭から動物の耳のようなものが生えている4人、一家族のような人たちが乗っているオブジェ。
ちょっと奇妙な出で立ち、表情ですが、ファンタジーの世界からこちらへと紛れ込んできたかのような不思議な感じがして、時間をかけて眺めていると乗っている人の変わった形や表情にもだんだん慣れてきて、いろんなストーリーが浮かんでくるような感じです。
それにしても、これが木屑と樹脂とできているとは...!

・泉東臣「葛」
和泉さんの作品を目にする度に、その圧倒的な存在感、強烈な迫力に引き込まれてしまいます。
今回の作品もこれまで拝見してきたのと同様に濃い茶色が全面を支配した力強い色彩感。
描かれているのは網のフェンスにびっしりと絡まる蔦、そこに葛の葉がぶわっと開いていて、その葉の一枚一枚は、もう平面の領域を超えてしまっているといっていいほどに立体的。
そういったなかで、画面中央部に、そこに引力が向かっているかのように金色が配色されているのが作品に対する想像力をかき立てられます。

・井上越道「黄華舞」
金箔、銅箔が丁寧に配置された画面の組み合わせによる屏風の作品。
合計7点の画面で構成されていて、配置のされ方が現代風、それぞれは透明のアクリルパネルのなかに収められています。
正方形の箔が整然と並んでその黄色い輝きは秋の気配。そのなかに自転車が1台佇むように置かれていて、下のほうには散った銀杏の葉。箔の輝きがやさしい陽射しを想像させてくれます。

・川本淑子「逃亡者」
タイトルの「逃亡者」とは、自然のなかの小動物たち、この作品に登場するうさぎとりすのことだそうです。やわらかな毛並みがていねいに表現されたりす、耳の表情がゆたかでちょっとユーモラスでさえあるうさぎ。それぞれ数匹ずつが、落ち葉が散らばる木の根元に集まっています。
秋を思わせるやさしい色彩が大きな画面いっぱいに広がっていて、わずかにちりばめられた金箔の控えめな輝きも効いています。

・三枝淳「花鳥図−5」
伝統的な「花鳥画」を意識して描いているという三枝さんのこの作品は、とにかく空一面を覆い尽くす鮮やかすぎる赤色が強烈です。
その強い色彩を背景に、力強くうねる木の幹、濃紅のダリア、そして凛とした佇まいから神々しさを感じる、背景の青に引けを取らないほどの鮮やかな青い色彩を纏った鳥(コシアカキジ、上野動物園で観られるそうです)。
昨年の「波濤の会」展で拝見した作品は軽やかな印象だったので、僕が三枝さんに対して持っていたイメージと逆の、相当に力強い作品を拝見できて、嬉しい驚きがありました。

・名古屋剛志「"bookworm"」
名古屋さんが今、すごく面白いです。どんどん変化している、表現の幅が広がっている過程が実によく伝わってきます。
本。眠る女性。画面中央上部には時計の文字盤。そのまわりに広がる筆記体ふうの文字のようなもの。
画面全体を覆う色彩は暗いブラウンとグレー。
タイトルは「本の虫」という意味だそうで、本を読んでいて眠ってしまった女性の夢のなかの世界、描かれているさまざまな情報から、さらに深い、沈むように深い、謎めいたイメージを喚起されます。

・日根野裕美「face」
昨年のスパイラルでのC-DEPOT展、新生堂での個展でも出展されていた、淡い黄色の作品です。
場所を変えて何度か拝見しているこの作品、同じはずなのに展示される場所で印象が違って見えるのはやはり面白いです。僕のなかで、この作品への印象がだんだん育っているのかも知れません。

・浦和志津香「清夏」「浅間」
あたたかさ、ポップさ、ユーモアを感じる明るい稜線の草、木の葉、白い猫。
淡いグレーの色調による浅間山。
親しみを感じる雰囲気が面白いです。

・芹田紀恵「転生」
昨年秋に佐藤美術館で拝見した作品で、横たわる女性、その向こう側に浮上するクラゲが描かれている不思議な静謐感をたたえた作品。
黒に金の組み合わせで描かれているクラゲの幽玄さが印象的です。

・松永龍太郎「風の標」
モスグリーンの背景に、白く明かりが当たるようにそこにある、貝殻の山。
「波濤の会」のときは弾けた色彩の作品だったので、この作品の静かな感じは意外でちょっとびっくり。

・井上恵子「IL CORTILE」
イタリアの古代建築の大きな中庭、一面にひろがるきみどりいろの芝。そこに小さな白いいすがひとつと、白いワンピースを着た女の子の後ろ姿。井上さんの油彩の作品はどこかふわっとしたやわらかな色彩感が印象的なのですが、この作品もその辺りの個性はふんだんに感じられつつも、作品からより具体的な物語(といっても空想上での、という意味ですが)がイメージされるほどにひとつひとつのものが他のものとのかかわりをしっかりともっているように思えました。

・金木正子「陽光」「月光」
いろんな意味で対になっている2点組の岩彩の作品です。
どちらにも木と女性とがいて、まず陽が出ている作品では桜の柄のワンピースを着て、目を閉じた女性の立ち姿。もう一方の夜の作品は、女性は黄色の花柄の服を身につけ、緑色の髪で、座っています。他にも前者が金の背景に黒の地面、後者は銀色の地面で空には月が浮かびます。ニワトリとフクロウという対もあります。
丁寧な表現が随所にあって好感が持てます。

・森田洋美「夜空」
濃紺の空間に、ふわりと上へ向かっていくような青白い光のなかに、人の顔であったり、蝶、鳥などが描かれている、なんとなく魂の昇天をイメージさせてくれる作品です。
冬に見るとその静けさもよりいっそう強く感じられます。
武蔵野美術大学鷹の台キャンパスにて。(1/27-1/30)
http://www.musabi.ac.jp/whatnew5/sotsu05/

もっとさくさくと観るつもりが、終わってみたら4時間半経過。
それでも全部見ることができず、今年はできるだけ大学の卒業・修了展示は観ようと思っているのですが、初っ端からその量に圧倒されてしまい、大丈夫なのか自分、と。

で、ムサビの卒業・修了展示。
特に印象に残ったものを。

・後藤映則「Revolving Screen Project」
天井からさまざまな高度で吊るされた数十個のモーター。その先には細い幅の白い紙がついていて、モーターが回転するとそれらは円形のスクリーンと化し、その画面に映し出される映像は斬新な距離感がとにかく刺激的。床に仰向けになってそれを見るのですが、右手に装着したセンサーを動かすとそれに合わせて画面も動きます。かなり面白かった!
小さな透明アクリルの箱にもモーターが配置されていて、これは上から蜘蛛の巣や蝶の映像が映し出されていて、こちらもきれいで。
その発想に大いに感服。

・本保佑樹「回転する対話装置」
吹き抜けのところに設置された壮大な作品。
ペダルを漕ぐと、それに呼応して駆動する巨大なプロペラ。
とにかくその大きさと、それが人力で動かせるということが面白かった!

・柏原由佳「ツールド・フランス」
白いままの背景に、カラフルな色彩感で描かれた自転車レースの一団。
そのやさしい鮮やかさと軽やかさが印象に残ります。

他、印象に残った方々を敬称略で。
池田光弘 佐々木環 佐藤孝子 田中恵美 豊泉綾乃
鳥居信吾 篠田典秀 紅谷京子 武藤史よ 矢口佳那
白石顕子 米久保慶 福井佳寿子 萩原裕子 赤穂純子
黒谷美保 鈴木保子 萩坂智子 横堀真理子 神田寛子
田島亜紀 青木美歌 山下永 法橋知紗子 真浦愛子
石田美樹 今野翼 水野蓉子 石川晶子 植木秀治
☆マークのレビューは芸力(http://homepage2.nifty.com/geiriki/ten/pickup.html )にUPしてます、ぜひ。
★マークはあらためて。

☆三井統 個展《1/24》
@ars gallery(1/24-2/5)
http://www.a-s-o.jp/gallery/scadul_s.html
☆瀧下和之「桃太郎図」展 Muka^shi Mukashi《1/26》
@シブヤ西武B館8階美術画廊(1/24-2/5)
https://www2.seibu.co.jp/wsc-customer-app/page/020/dynamic/item_details/ItemDetails?item=I000023141
☆山口藍 版画展「あけましておめでとうございます」《1/26》
@NADiff modern(1/2-1/29)
http://www.ninyu.com/ai/exhibition/akeme/akeme.html
★作家の卵展《1/27》
@おぶせミュージアム(1/27-5/9)
http://www.town.obuse.nagano.jp/bijutsu/chinami/chinami.html
★武蔵野美術大学造形学部卒業制作展・大学院修了制作展《1/29》
@武蔵野美術大学鷹の台キャンパス(1/27-1/30)
http://www.musabi.ac.jp/whatnew5/sotsu05/
・“Time is Art 2” indigo chika akazaki《1/29》
@にじ画廊(1/26-1/31)
http://www12.ocn.ne.jp/%7Eniji/exhibition.htm

《1/28》
・岡村桂三郎展
@佐藤美術館(1/12-2/26)
http://homepage3.nifty.com/sato-museum/exhibition/index.html
物理的な重量感をかじる日本画と、絵本の挿絵になった作品との展示。
大きな作品の迫力は相当なものですが、印象はそのときの気分でかなり左右されるかと。
・マコトフジムラ展 愛情シリ−ズ
@Gallery d.g./画廊 はね(1/23-2/4)
http://www.geocities.jp/artfrontier_gallery/
岩彩の抽象画ですが、ちょっと僕にはピンとこないです。。。
ライブペインティングで描かれたという作品はよかったのですが。。。
・池内晶子・岩瀬殉一郎 版画展
@ギャラリー21+葉(1/23-2/4)
http://www.gallery21yo.com/exh-folder2006/hanga/hanga.html
池内さんのエクストラミニマムな銅版画と、糸を使った作品。
ここまで小さな世界を表出するのっていろんな意味で尋常じゃない!
☆谷口晴剛展
@ぎゃらりぃ朋(1/20-1/28)
・池下章裕 リアル・スペース・アート展 はやぶさから未来へ
@柴田悦子画廊(1/28-2/4)
http://kgs-tokyo.jp/shibata/2006/060128.html
男の子の精神を惹起する、かっこいい宇宙を描いたCG。
・叙情詩 富樫梢 阿部貴行
@Gallery銀座フォレスト
・suto rinco exhibition cache-cache
@Gallery銀座フォレスト・ミニ
・「life/art ’05」Part 3 金沢健一
@資生堂ギャラリー(1/26-2/12)
http://www.shiseido.co.jp/gallery/current/html/index.htm
☆シシドリュウジ イラストレーション展
@gallery S.c.o.t.t(1/17-2/5)
・箔の作品 泉秀憲&横江栄一展
@十一月画廊(1/23-2/4)
http://g-11.cool.ne.jp/
☆小柳裕 新作展
@KENJI TAKI GALLERY(1/12-2/18)
http://www2.odn.ne.jp/kenjitaki/pages/intro1_j.html
・+風 プラスカゼ
@リビングデザインギャラリー(1/26-2/7)
http://www.ozone.co.jp/WebX?13@139.vlZVbxazcX6.3@.346a1b18
会場中に設置された紙。白の世界。
それらがそこここにある扇風機からの風で揺らいでます。
もう一工夫欲しいような気もしますが、風を視覚的に感じるインスタレーションというアイデアは買います。
☆マークのレビューは芸力(http://homepage2.nifty.com/geiriki/ten/pickup.html )にUPしてます、ぜひ。
★マークはレビュー済み。

☆末宗美香子《1/19》(1/19-1/28)
@新生堂
http://www.gaden.jp/shinseido/2006/060118.html
☆こんどうあや個展「Marian Bootleg」《1/19、1/22》(1/19-1/24)
@B Gallery
http://www.beams.co.jp/beams/b_gallery/b_gallery_sheet/kondo.html
・弘法の筆2《1/20》(1/20-2/18)
@ヴァイスフェルト
http://www.roentgenwerke.com/
道具ってかっこいい。たしかに物議を醸しそうな展示ではありますが(笑)、見応えはなかなかのものでございます。
そして、値札がシュールに思えるのです。
☆my cup of tea -Private Luxury-《1/20》(1/20-2/18)
@TARO NASU GALLERY
http://www.taronasugallery.com/exh/index.html
★MOTアニュアル2006 No Border -「日本画」から/「日本画」へ(1/21-3/26)
@東京都現代美術館
http://www.mot-art-museum.jp/kikaku/2/

《1/21》
・森川勝栄 個展(1/16-1/21)
@銀座スルガ台画廊
☆重野克明 新作銅版画展(1/16-1/26)
@77 Gallery
http://www.gaden.jp/77gallery/2006/060116.html
・工藤正毅展(1/16-1/21)
@ギャラリー山口B1F
http://gaden.jp/yamaguchi/2006/060116b.htm
グリーンとベージュ、作品によって朱が一部登場するポップな抽象作品。色彩からどこかの景色を連想します。
・倉重光則(1/16-1/28)
@ギャラリー現
http://www.jpartmuseum.com/g_gen/
☆五十嵐朋子展 -metallic children-
@ギャラリー銀座フォレスト
☆山極満博 展(1/10-1/28)
@ギャラリー覚
http://www6.ocn.ne.jp/%7Eg.kaku/yamagiwa3.html
☆落合良江展(1/19-1/24)
@柴田悦子画廊
http://kgs-tokyo.jp/shibata/2006/060119.html
・谷口晴剛展(1/20-1/28)
@ぎゃらりぃ朋
http://www.remus.dti.ne.jp/%7Eanne/tomo_new.html
金の色彩がふわりと広がっている日本画。
改めてじっくり観る予定。
・野坂徹夫展(1/10-1/21)
@ギャラリー椿
http://kgs-tokyo.jp/tsubaki/2006/060110.htm
水彩の滲みの味わい、どこか郷愁を誘う質感の色彩。
秋の気配、やさしい夕暮れの空。
東京都現代美術館にて。(1/21-3/26)
http://www.mot-art-museum.jp/kikaku/2/

すごく楽しみにしてた企画展。
昨年のとは打って変わって、今回は「日本画」をテーマに、既知の作家を多数含む7人の個性的なアーティストがセレクトされている、僕にとってかなり興味深い企画で。

アーティストは以下の7名。
・篠塚聖哉
・天明屋尚
・長沢明
・町田久美
・松井冬子
・三瀬夏之介
・吉田有紀
このうち4人の個展に昨年足を運び、実際にお目にかかった方も3人。

現美の3階へエスカレーターで移動すると、まず正面に松井冬子さんの大作が。
黒い闇に包まれる湖か、そこに体を沈み込ませている象。
広い画面全体を覆う、薄塗りながら深い黒のなかに、そこだけまるで別次元の生命感を放つ、象の青い目。どこか鋭くもあり、そこだけ明るい色彩ながらむしろ黒より深い暗さを帯びているかのよう。

というわけで、順路に沿うと最初が松井冬子さん。
ぐっと照明が落とされた一室に、掛け軸の作品を中心に展示されています。未見ですが昨年の個展で出展された作品も多数、さらにアートフェア東京や成山画廊でのグループ展で出展された作品も。
引力を無視したかのような縦の流れが印象的な幽霊画、白い花々が咲くなかに横たわる臓があらわになった女、あるいは犬の異様な高貴さ...これらの作品が醸し出す雰囲気は、あえていえば「虚」。高次元にねじれたメビウスの輪のような、現世をかけはなれたイメージが伝わってきます。

続いて篠塚聖哉さんの作品。
フタバ画廊での個展で拝見した作品も多数展示されていましたが、驚くほど雰囲気が違う。
広めの空間にあって、一点一点接近してではなくすべての絵を一ケ所から俯瞰するように眺めていると、抽象的な画風で描かれたそれぞれの絵がしっかりとどこかの景色を、そしてその自然の力強さを連想させてくれます。マスキングが丁寧に施されてしっかりとエッジがカットされた画面のシャープさにも身が締まる思い。

通路を通り抜けた先には、町田久美さんの作品群。
こちらも西村画廊での個展、また昨年のVOCA展に出展された作品など、見たことがある作品多数。
しかし、この色彩的な統一感はすごい、圧巻。
繊維が照明の光を反射してきらめく麻紙のやわらかさとシャープさとを兼ね備えた色・質感、そこにケレン味のない黒の線。拾い画面のなかでは大きな弧を描きながら、小さな作品でもくるくると細かく重なりながら、麻紙の面を分断していき、背景と人の肌の色とに分けられている面白さ。
また、ひと筆で同じ太さで線を引き切るというのは実はすごい技術、というのをある方から伺って、そういった視点からもまた違った圧倒的な絵の力を感じます。

たっぷりの高さを誇り、美術館ならではの立体的に広い空間、こちらには長沢明さんと吉田有紀さんの大作が。このお二人のみ、未見で。
長沢さんは虎をモチーフにした大きな作品で、その大きさに加えて画面の質感、さらに土っぽい色彩から、まるで古代の壁画のような印象を受けます。単純化された虎のどこかコミカルにも見え、そのシンプルさが逆に力強ささえ感じます。
吉田さんはさらにシンプルな展示、作品数もたったの3点。
しかし、この3点が織り成す空間が素晴らしく気持ちいい。
漆黒の背景に、その闇を裂くように存在する光。ある作品では点の集まり、ある作品は円を描きながら。作品の大きさもあって、相当にスペイシーな空間。

その先、がらっと変わって三瀬夏之介さんの作品。
羅針盤で展示された作品が中心ですが、とにかく大きな作品なので、このたっぷり広い空間で再び拝見できるのは嬉しいです。
中央に屏風絵、壁には大作が。
遠近感にとらわれずに描かれる強烈な風景。空間の広さに負けていない、すごいインパクトです。

最後は天明屋尚さん。
ミヅマアートギャラリーで拝見した作品も数点。
まず、トレーシングペーパーで制作された掛け軸の鉛筆画、この精密さに目を奪われます。1点は見たことがある作品でしたが、もう一度見られる嬉しさと、仏像がたくさん描かれた掛け軸の尋常でない精緻さに驚きます。
そしてアクリル画。板に直接描かれていて、その板の木目もうっすらと表面に見えていたりして、岩絵具でなくても日本画的な質感がちゃんと伝わる面白さ。さらに描かれる題材がとにかくかっこいい。それぞれの手が銃やナイフなどの武器を握っている千手観音、トラック野郎的な装飾が施された戦闘機など。機会に対する男の子の憧れがモチーフに挿入されている感じが面白いです。

最後に松井冬子さんの描く肖像画。

今日は天明屋尚さんと松井冬子さんのアーティストトークが開催されましたが、美術館側も予想しなかったほどの人の数で、さらに時間もなく、聴けず残念。
・Jibaro Times: La Mano Fria Report 2
@UPLINK GALLERY(1/7-1/26)
http://www.uplink.co.jp/gallery/log/000941.php
線が、文字が踊っている!
タブーなんて平気で踏みつけていくような自由さが痛快。

・art in sympathy;アートに共感して 2nd.
@VISION’S(1/10-1/17)
http://visions.jp/index.html
実にたくさんのアーティストの小品が並ぶなか、唯一の既知の作家、田崎冬樹さんの作品にちょっとびっくり。原色が湧くような抽象のイメージでしたが、今回拝見した作品はそっから若干具象に振れた感じで、それでも深い原色の青の色彩感にぐっと引き寄せられるような。

・鈴木 強 日本画展
@福原画廊(1/11-1/21)
面白い!
からりと明るい金箔の使いっぷりが気持ちよくて、なんとも縁起が良さげなのですが、それを背景に描かれる動物たちの表情がすべて笑顔。
象や鶴の笑顔なんて、もう最高で。

・日野之彦 新作展
@GALLERIA GRAFICA(1/14-2/4)
http://www.h7.dion.ne.jp/%7Egrafica/exhibits/hino.html
日野さんの作品はいろんなところで観る機会があって、美術雑誌の表紙にもなっていたので見れば思い出す人も多いと思うのですが、けっこう好き嫌いがはっきり分かれる画で、僕はどちらかというと苦手でして...。
今回の個展では日野さんのあの目がぎょろりとしたほぼ等身大の人物画がたくさん展示されていてちょっと引きますが、数点展示されていた鉛筆画、描かれているのは同じくギョロ目の人の肖像ですが、モノクロの分だけそのアクの強さが抑えられていて、けっこういいかも、と。

以下の展示のレビューは「芸力 http://geiriki.jp 」で
書いてますので、ぜひご覧くださいまし。
・干支(丙戌)展
@gallery d.g/画廊はね(1/10-1/21)
http://www.geocities.jp/artfrontier_gallery/news/060110.html
・李禹煥新作版画展・旧作展
@シロタ画廊(1/10-1/28)
http://www.gaden.jp/shirota/2006/060110.html
・國安孝昌展
@ギャラリーなつか(1/10-2/4)
http://www.ginza.jp/natsuka/
・安冨洋貴「夜想曲」
@ギャラリー本城(1/11-1/28)
http://www.galleryhonjoh.com/htm/jp/yasutomi.htm
・春木麻衣子「●○」
@NADiff(1/14-2/12)
http://www.nadiff.com/gallery/mainpage.html
・anonymous 尾野よう子展
@ギャラリーGeki(1/10-1/15)
http://www.honda-geki.com/geki/geki.html
・渡辺薫 個展
@ART STUDIO PEACE PORT(1/15-1/29)
・東 悠紀恵 展
@Gallery元町(1/9-1/15)
http://www.group-rough.net/g-motomachi/
・ショーン・コーフィールド 版画セレクション
@イセサキ・モールコイチ(1/12-1/24)
http://www.9ten.com/koichi/2006/060112/060112.htm
《1/12》
・Jibaro Times: La Mano Fria Report 2
@UPLINK GALLERY(1/7-1/26)
http://www.uplink.co.jp/gallery/log/000941.php

《1/14》
・art in sympathy;アートに共感して 2nd.
@VISION’S(1/10-1/17)
http://visions.jp/index.html
・NEW YEARNING −32人の小作品展−
@SAN-AI GALLERY(1/12-1/21)
http://www001.upp.so-net.ne.jp/LL-arts/
・干支(丙戌)展
@gallery d.g/画廊はね(1/10-1/21)
http://www.geocities.jp/artfrontier_gallery/news/060110.html
・- Viewtiful -
@Gallery unseal(1/10-1/21)
http://www.unseal.jp/exhibition/viewtiful_0601.html
・鈴木 強 日本画展
@福原画廊(1/11-1/21)
・李禹煥新作版画展・旧作展
@シロタ画廊(1/10-1/28)
http://www.gaden.jp/shirota/2006/060110.html
・Liu Zheng
@東京画廊(1/13-2/10)
http://www.tokyo-gallery.com/tokyo/index.html
・Art Market
@exhibit Live & Moris(1/10-1/21)
http://artlive.cool.ne.jp/2006/art_market/art_market.html
・yo eikin
@ギャラリー・アート・ポイント(1/9-1/21)
・飯岡京子展 〜Grasp it!〜
@青樺画廊(1/9-1/21)
・東海林洋一展 Sculpture Exhibition 〜凹〜
@Key Gallery(1/9-1/21)
・日野之彦 新作展
@GALLERIA GRAFICA(1/14-2/4)
http://www.h7.dion.ne.jp/%7Egrafica/exhibits/hino.html
・國安孝昌展
@ギャラリーなつか(1/10-2/4)
http://www.ginza.jp/natsuka/
・安冨洋貴「夜想曲」
@ギャラリー本城(1/11-1/28)
http://www.galleryhonjoh.com/htm/jp/yasutomi.htm
・春木麻衣子「●○」
@NADiff(1/14-2/12)
http://www.nadiff.com/gallery/mainpage.html
昨年、東京都現代美術館で開催されたイサム・ノグチ展を最初に観にいって、そのおおらかな作品に直に触れさらにモエレ沼公園という壮大な作品を遺したこの人物についてもっと知りたい、という好奇心が湧いたところで、帰りに覗いた美術館内のショップコーナーで見つけたこの文庫本。
その時点では読みかけの本があったのでそこでは買わなかったのですが、それから数日すぎて改めて上下巻同時に購入、このところ読む時間がめっきり少なくなったせいでかなり時間がかかってしまいましたが、ようやく本日読了。

映画をあまり観ないので僕にはこういう経験はないですが、ある小説を映画化したものがあって、その小説を読んでいたら映画に対して物足りなさを覚えるというのをよく聞きます。
このイサム・ノグチの伝記を読んでいて、今の例え話とは順番が逆ですが、あらためて考えてみて、現美での回顧展は物足りなかったんだな、と思えてきます。あの超大作「エナジー・ヴォイド」をもってしても。。。

それくらいに詳細にわたって丁寧に取材された伝記です。
イサムが生前に残した言葉や資料にとどまらず、イサムの幼少期から晩年にいたるまで、世界各国にいるイサムと交流をもったたくさんの人からの話も多く引用されていて、それぞれの時代背景などが相当なリアリズムをもって書かれています。
無論、この伝記の作者の考えも、直接的ではないものの随所に登場しています。ただ、その考えがいちばん反映されているのは、部分というより全体の構成ではないか、と何となく思います。

イサムの父と母の生い立ちと出会い。
日米での幼少の時期とそのとき背負ったトラウマ。
頭像制作が大きな収入源だった時代。
アメリカ、日本、インド。
イサムの人生の中に登場するたくさんの女性。
山口淑子(李香蘭)との結婚、離婚。北大路魯山人との蜜月。
「石」の時代、すばらしい石工との出会い。
それぞれの時代における作品とのかかわり以上に、そのときにどういう人との交流があったか、こちらのほうに興味が向きました。

イサム展にはもう一度、会期終了間際に足を運んでいるのですが、その時点ではようやく上巻を読み終えるかな、といったくらいでした。
やはりこの伝記を読んでから見るのとではぜんぜん違っていて、もっともその時点では初期の作品に対してのみでしたが、それぞれの作品が制作されている時代にイサムはどういう状況だったかを知っているだけで、「ああこの作品がそうなのか」という感慨深さがありました。

そういうわけでイサムの後期の作品、本格的に石彫に取り組むようになってからの作品は、その作品からのみの印象しか持ち得なかったのですが(もちろんそれで充分だと思います)、嬉しいことにこの春に横浜美術館であらためてイサムの作品が観られそうです。

それまでにもう一度読み返せれば...。
「芸力 http://geiriki.jp 」でもレビューを書いてますのでよろしかったらご覧くださいまし。
で、感想が重ならないように。。。

・アートdeチャリティvol.3(1/9)
@十一月画廊(1/9-1/21)
http://g-11.cool.ne.jp/

十一月画廊で個展を行った作家の作品を集めた展示。
なかでも印象的だったのが、個展を見損ねていた大河原愛さんの作品。
木のブロックに描かれた女性のヌード。背景が白に塗られ、色を抜いて木目がそのまま活かされるかたちで描き出される女性の姿。そこに被さるストッキングの布。かなりユニークなスタイル、美しきアバンギャルド。
他にも面白い作品多数出展されています。かなりの見応えです。

・横尾英子展(1/9)
@柴田悦子画廊(1/5-1/11)
http://www.shibataetsuko.com/

冬の終わりの絵。
ほぼ無彩色で、そのなかにやわらかく溶け込む赤や青が描かれる風景に奥行きを与えているように思えます。
雪解けの水が勢いよく流れ、はげしく飛沫をあげる川。
一枚一枚ていねいに描かれた紅葉。
春へと勢いを増すように動く大地の息吹きと、抑えられた色彩による静けさと。

・井上直久<星をかった日>原画展(1/9)
@Pinpoint Gallery(1/9-1/14)
http://www.pinpointgallery.com/06INOUENAOHISA.html

ある星でのお話。
畑にできたかぶを市場へと売りにいき、そこで何とか手に入れた小さな星の種を畑に浮かべて、水をやり、季節を経るごとに大きくなっていき、遂には住んでしまう、という物語の絵本の原画。
きれいです。さまざまな色が重ねられ、ストレートにファンタジックな感触。
資生堂ギャラリーにて。(1/5-1/22)
http://www.shiseido.co.jp/gallery/current/html/index.htm

昨年末から始まったこの企画「life/art ’05」の第2段に行ってきました。連続企画とあっては見逃すわけにはいかない。

今回は、漆を大胆に使った立体作品。
アートに触れるようになってその素材の印象が変わったひとつが漆。工芸品に使われるものと思っていたのが、特にコンテンポラリーアートに使われるとその質感から表出されるものの幅広さには度々驚かされてきました。

展示されている田中氏の作品は3点のみ、しかしそれぞれ大きな立体作品で、資生堂ギャラリーの3次元的に広い空間のおなかでその存在感をいかんなく発揮しているように思えました。

火山から流れ出した溶岩でできた大地を連想させる、メインスペースの中央に広げられた「The Primal Scene」。いくつかのパーツに分けれていると思われる歪んだ板のようなものが艶のない鈍い色の漆で覆われ、暗めの照明も相まってなんとも奇妙な雰囲気を醸し出しています。
同じスペースにもうひとつ展示されている美しい作品とのアンバランスさも面白い。

奥のちょっと狭くなったスペースにあるのが「Inner side - Outer side」。
シャープな曲面で構成された大きな立体作品。1枚の薄い板が丸まったようなもので、その表面の漆は磨き上げられているのかしっかりと見るものの姿を映し込みます。
またその色彩から連想されるものは...あの川村記念美術館のロスコー・ルーム。どこまでも奥行を感じる深い朱。もしこの作品がロスコー・ルームに収められて、ロスコーの色彩がこの表面の漆に映り込んだら、と思うと...。

まだ多くのギャラリーが本格的に始動していない日だったこともあって、ゆったりと充分に時間を使って拝見することができました。
これから続く展示も楽しみ。

 
 
 
 
 
あ、追伸。
前回観て、今回もご覧になる方へ。

いいか、油断するなよ!
(ネタバレはコメント欄に)
《1/8》
・「Events of a day.., A case of A cat」POP OVER:Shoko Sugiyama Exhibition
@にじ画廊(1/7-1/17)
http://popover.info/

《1/9》
・坂本藍子展
@ギャラリー渓(1/9-1/15)

・アートdeチャリティvol.3
@十一月画廊(1/9-1/21)
http://g-11.cool.ne.jp/

・ギャラリーコレクションによる Allumage 展
@K’s Gallery(1/6-1/17)
http://ks-g.cool.ne.jp/ex06-1-6.html

・横尾英子展
@柴田悦子画廊(1/5-1/11)
http://www.shibataetsuko.com/

・中村浩子展
@ぎゃらりぃ朋(1/9-1/14)

・森山晶展
@フタバ画廊(1/9-1/15)
http://www.futabagallery.com/

・牛島達治展
@a piece of space APS(1/9、1/11、1/12)
http://www.a-piece-of-space.com/main.htm

・「胞 つつむ」山崎明日香 絵画展
@ギャラリー銀座フォレスト・ミニ(1/9-1/14)

・澤田文一 展
@ギャラリー銀座フォレスト(1/9-1/14)

・折井和良展
@ギャラリー La Mer(1/9-1/14)
http://www.aa.alpha-net.ne.jp/arusu/yotei.htm

・宮本ジジ「Traveling Asia」
@Space YUI(1/9-1/14)
http://www.spaceyui.com/gallery/schedule/image/jiji.htm

・井上直久<星をかった日>原画展
@Pinpoint Gallery(1/9-1/14)
http://www.pinpointgallery.com/06INOUENAOHISA.html

・「草木染めと草盆栽」展
@spiral market(12/26-1/31)
http://www.spiral.co.jp/market/mar_sms.html
府中市美術館にて。(12/10-2/19)
http://www.art.city.fuchu.tokyo.jp/biennial.html

昨年末から始まっていたこの展示。
大谷有花さんの作品が広い空間で拝見できるということで楽しみにしていたのですが、本日行ってきました。
というのも今日は大谷さんのアーティスト・トークが開催される日で。それにあわせて2時前に美術館に着いたのですが、てっきり作品を前にして行われると思いきや、別室でプロジェクターを使って過去の作品を紹介しながら現在にいたる過程などを説明していく、というちょっと予想外でしたがかなり興味深く面白い内容でした。

というわけで、アーティスト・トーク後に展示室へ。
大谷さんの作品はエレベーターを昇って展示室の入り口を通ってすぐ左手に。
まず、コーナーの入口のところにキミドリとピンクの下地を白が包むように画面に広がる「白いソファー-花色-」。
大谷さんにとって白は「調和」のイメージだそうで、それが「無意識」のキミドリと「現実」のピンクを覆っていて、さらに「ふたりが座って対話しあう場所」としてのソファが描かれている作品。
なんだかすごく幸せなイメージが喚起されるようなステキな絵です。

中に入ると、まず嬉しいのが壁がキミドリになっていること!
一面のキミドリに展示されている作品たち。これは大谷さんにとってもかなり嬉しいことだったようです。
Gallery MoMoで拝見した作品や第一生命ギャラリーで発表されたものも含まれてますが、こういうシチュエーションであらためて観るとやはり違う印象で、より大谷さんが伝えようとするイメージの中に、心だけじゃなくそれこそ体全体で入っていけるような...すごくポジティブな空間演出がなされています。

今回の展示でのメインといってもいい作品は、横幅が10mという大きな作品「無意識との対話X」。
とにかく描くのが大変だったというこの作品、今回の展示のために描かれたとのことで美術館側ともいろいろ相談があったようなのですが...
「私のほうがもう10mというスタンスで描く、という心の準備ができてしまっていて、(府中市美術館学芸員の)山村さんにお話ししたときはすでに決意が固くて、山村さんの意見(小さい作品を含めて壁面に並べようというもの)もよかったんですけど、もう手後れな状態で(笑)。美術館で展示する上でこういうやりとりは楽しいんです、でもあの空間を考えたらやはり10mの作品を描きたいな、というのが最初の構想でした」
「さすがに10mというのは描いたことはなくて、4mとかはあったのですが...なのでこれは無意識、というよりは少し意識的、構造的な部分も出して描きました」
「体力的にはもうとにかく大変で、これが終わったあとはもう何も手をつけられない状態でしたね」
まさに今の大谷さんの集大成ともいえるような作品で、中心に「意識」を表す赤、その両脇に黒、両端にキミドリといった大谷さんらしい鮮やかな色彩感に加え、描かれているものも山、鳥らしきもの、ハシゴといったそれぞれ何かを象徴するようなものが詰まっています。アーティスト・トークでは再三「脳の中身はどうなっているか」ということに触れられてきたのですが、それとはとりあえず関係なくても充分に見ている側のイメージが活性化するような元気な作品です。

ここで初めて拝見した作品「無意識との対話VIII」、これはほぼ画面全体を黒が覆う、ちょっと雰囲気が違っていそうな感じなのですが、この黒も大谷さんにとってはポジティブな色だそうで、そう思って観るとその色の力強さがいっそう強調されて感じられ、他の作品と同様、あるいはもっとたくさんの元気をくれるような作品で。

とにかく素晴らしい展示でした!
ここまでやれるのが美術館の強みで、だとするともっと若い作家を紹介する企画があると楽しいな、とも思ったり。

他の作家の作品も見どころは多く、須賀昭初さんの作品は縦方向への動きが印象的、不器用な質感ながら黒などの太い線から異様な力強さ、動的な感じを受ける鈴木省三さんの作品、水上央子さんは曲面の構成によるポップな感触もある抽象作品で、おそらく丁寧にマスキングを施して描かれたであろうひとつひとつの色彩の部分とそれらの重なりが織り成すリズムが心地よく、色彩もそれぞれの作品で、例えば無彩色であったりパールっぽい感じであったりと統一感があって、けっこう面白いコンセプトを感じました。
《1/6》
・河上奈未 展 ― 陶俑 ムービング ―
@ガレリアセラミカ(1/6-1/31)
http://www.inax.co.jp/Culture/2006_01/c_01kawakami.html

《1/7》
・life/art ’05 Part 2 田中信行
@資生堂ギャラリー(1/5-1/22)
http://www.shiseido.co.jp/gallery/current/html/index.htm

・松岡 徹「ちいさなあなに」展
@Oギャラリー(1/5-1/15)
http://www4.big.or.jp/%7Eogallery/Pages/ryakureki/matuoka.html

・高橋靖史 展 -3D人体系-
@INAXギャラリー2(1/5-1/28)
http://www.inax.co.jp/Culture/2006_01/2_01takahashi.html

・スキノデリック 彫刻の表層
@東京芸術大学大学美術館 陳列館(1/6-1/22)
http://www.geidai.ac.jp/event/skinodelic/

・東京芸術大学美術学部彫刻科木彫研究室企画 アトリエの末裔あるいは未来 展
@旧平櫛田中邸(1/6、7、8、9、14、15、21、22)
http://www.yanesen.net/topics/topic/1933/

・カミノシゴトvol.5 〜美濃和紙素材宣言〜
@リビングデザインギャラリー(1/5-1/24)
http://www.ozone.co.jp/WebX?13@69.48WVb1mMaT2.0@.342fa197
近日始まる、あるいは始まってる展示で気になってるものを。

・カミノシゴト vol.5 美濃和紙素材宣言
@リビングデザインギャラリー(1/5-1/24)
http://www.ozone.co.jp/WebX?13@69.48WVb1mMaT2.0@.342fa197
芸力で紹介済みです。よろしかったらチェックよろしくです。

・スキノデリック 彫刻の表層
@東京芸術大学大学美術館 陳列館(1/6-1/22)
http://www.geidai.ac.jp/event/skinodelic/
・東京芸術大学美術学部彫刻科木彫研究室企画 アトリエの末裔あるいは未来 展
@旧平櫛田中邸(1/6、7、8、9、14、15、21、22)
http://www.yanesen.net/topics/topic/1933/
この辺りは逃せない。高見直宏さん参加。

・絵画の行方 ―現代美術の美しさって何?
@府中市美術館(12/10-2/19)
http://www.art.city.fuchu.tokyo.jp/biennial.html
なんといっても大谷有花さん。日曜日にアーティストトークあり。

・東悠紀恵 展
@ギャラリー元町(1/9-1/15)
http://www.group-rough.net/g-motomachi/
ここってまだ行ったことなくて...。

ちょっと先だけど、近美と現美も僕としては要チェックなのです。
《1/2》
・松尾たい子原画展“TAIKO MATSUO×ROPPONGI HILLS「ゆっくりあるいてみたい」”
@森アーツセンターミュージアムショップ
http://www.macmuseumshop.com/topics/index.php?cat=204
松尾さんによる六本木ヒルズをモチーフにしたぱっと明るい感じの作品。
どこかカラッとしていて気持ちいいです。絵のなかでは冬も楽しい。

《1/3》
・国宝室 松林屏風図
@東京国立博物館 (12/27〜1/29)
http://www.tnm.jp/jp/servlet/Con?pageId=A01&;processId=02&event_id=1750
前日に杉本による長谷川等伯のこの作品のカバーを観ていたこともあり、いいタイミングで「本物」を観ることができました。
・・・びっくりした。ホントに。
遠目で観てるぶんにはもやっとした幽玄な水墨画の松が居並んでいるのですが、近付くとその筆のタッチの荒々しさ、剛胆さに驚きます。特に黒が濃い部分は水墨というよりもっと油的な質感さえ感じます。
そうやって描かれた松の葉は、むしろ鋸のように鋭い。
そして薄塗りの部分はやはり制裁で幽玄で...そのコントラスト、さらに奥にうっすらと見える山のシルエットも印象的。
残るべくして残ってきた作品が持つ力に圧倒されました。

この日は正月モードということも合って、博物館敷地内で獅子舞を観ることができたりクラリネットアンサンブルのミニコンサートもあったり、なかなか楽しいイベントてんこ盛りで。

《1/4》
・原田奈々展覧会「ツーリズモ」
@mona records gallery(1/3〜1/15)
http://www.mona-records.com/gallery/galleryFrameset.html
お姉さんの原田郁子さん(クラムボンなど)と旅した先で撮ったポートレイトや風景の写真。
すごくきれいな表情の原田郁子さん。カラッと明るくて気持ちいい風景。
ちょっとしたスペースにすてきな写真が飾られているのもいい感じで。

・穂坂毅展
@アートトレイスギャラリー(1/3〜1/29)
http://www.arttrace.org/gallery/member/hosaka/index.html
パネルの上に正方形のパネルを乗せたグレーの画面に黄色の四角が配置される不思議な感じの抽象画。
それだけじゃなくて若干影のようなものも描かれていて、眺めていてなかなか面白いです。

1 2 3 4 5 6 7 8 >

 

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索