VOCA展 2006《3/19》
2006年3月23日 アート コメント (2)上野の森美術館にて。(3/15〜3/30)
http://www.ueno-mori.org/tenji/voca/2006/index.html
僕がVOCA展を観るのは今年で2度目ですが、すでに春の風物詩的な感じがしてます。
昨年は圧倒的に未知のアーティストの作品が多かったのですが、あれから1年経っていろいろと観て回ったおかげで今年のVOCAでは既知の作家の作品も多く、大好きなあのアーティストの大作が観られるという期待と、それでも未知のアーティストとの出会いがあってその驚きとの両方を堪能できました。
今年のVOCAのハイライトは、なんといっても小西真奈さんの「キンカザン1」「キンカザン2」。
油彩の作品で、「1」はむき出しの岩肌も目立つ波打ち際、「2」は靄が立ち篭めたような感じの鬱蒼とした森。海の青、岩肌の薄茶色、森の緑、どの色彩をとってもこのうえない瑞々しさがほとばしっていて、たっぷりの空間で眺めていて気持ちがどんどん清々しくなっていく感じがします。
小西さんの風景画には人物が登場することが多いのですが(これまで拝見した限りだと)、今回の作品では人物は大画面のなかに小さく描かれていて、これが絵の風景のスケールの大きさをさらに強調しているように思えました。
とにかく必見です!
ロバート・プラットさんの「Rendezvous」。
ミント色の下地に白のスプレッド。画面中央を横切るようにして、疾走する馬のシルエットが連続で描かれ、上方に黒の下地で木目調の模様、低い円柱のなかに鹿などのシルエットがパノラマみたいになって描かれている作品。さまざまなものがさまざまな色彩で重なることで得られるユニークな奥行き、そして使用される色から伝わる爽快感。これだけはっきりとした色彩なのに、ずっと眺めていたくなるような面白い絵です。
既にスターの貫禄がある、蜷川実花さんの「the otherside」。
赤い花が大きくプリントされたパネルに、プレキシパネル(厚めのアクリル板のようなもの?)にマウントされた40枚の写真。
とにかく原色の鮮やかさは強烈!花の表情の艶かしさといい、抜けるような空の青の青さといい、これほど鮮烈な色彩って他ではお目にかかれないような気がします。
橋爪彩さんの「少女都市」。こちらも折りに触れて拝見しているアーティスト。
夜、ガードレールに腰掛ける二人の女の子、彼女達は腰から下の部分しか画面には登場していませんが、それが例によって橋爪さんのエロティックな世界観をより強烈に演出している感じです。ひとりは白のスカートに裸足、脱ぎ散らかされた青のサンダル。もうひとりがチェックのスカートに黒のストッキングと靴。
すごく個性的で特徴のある写実力で、一目見たら忘れられない独特な光景が展開されています。
豊泉綾乃さんの「風景」。15版組の大きな銅版画。
exhibit Liveで初めて拝見した時から、何もないんだけどなぜか印象に残って心に引っ掛かってたのですが、今回大きな画面の作品を広い空間で観て、そのスケールの大きさ、残像の中に入り込むような感覚、焦燥と静謐との印象のコントラスト...とにかくそのモノクロームの世界を堪能できました。
佐伯洋江さんのシャープペンシルによる細密抽象画「Untitled」。
2点出展されていて、どちらも緩みなくピンとていねいに貼られた紙に、蓮、蜘蛛、ダリアをモチーフにしたようなものをとそのまわりに細かい模様などを組み合わせて、金銀の色鉛筆も一部使用しながら硬質で繊細な絵が描かれています。
描かれるもののぐっと引き込まれるような面白さがあるのですが、それとともに「余白の美しさ」も強く印象に残ります。日本のわびさびを未来的な感覚で表現したような。
楊雅淳さんの「遠くて、近いです」というコミカルなタイトルの作品。
内容もコミカル。カーテン状に描かれた白を背景に、緑、赤、黄が混ざりあった中央部。そこに黒の線で踊る人がいろんな縮尺と組み合わせで描かれていて、全体に軽くラメが散らばっているという作品。
描かれる人々の表情や仕草がなんとも言えず面白く、眺めていて思わず笑みが浮かんできます。特に左手前の比較的大きく描かれた女性(?)の表情が秀逸(笑)。
先日のギャラリー小柳や、今は渋谷のトウキョウワンダーサイトでインスタレーションが展示されている鬼頭健吾さんの平面作品「cosmic dust」。
凝縮された透明なビーズ、ピンク、ブルー、ホワイトのアクリル絵の具による糸状の線(たぶんそうだと思うのですが)、その裏に鏡。タイトル通り、まさに「宇宙の塵」が集まったような幻想的で未来的な画面、奥の鏡が効果的なのか、ユニークな奥行きがあります。このれが壁、天井、床に広がった中で、鬼頭さんのインスタレーションが展開されたらすごいだろうなぁ、と。
春木麻衣子さんの写真「Untitled 晴れ」。
例いよって写真の一部、というより画面の9割が黒。この黒はコントロールされたもので、実は青であったりグレーであったり、そういう色の究極の濃いかたちであるのですが、そうやって出現してきた黒の美しさが深く印象に残ります。
先のAランチでもオーダーが多かった(僕はし損ねたのですが、目の前を何度も通過していた)青木克世さんの「鏡よ鏡」。
平面のカテゴリーを強引に広げた、異様に作りこまれたゴージャスな額が強烈なインパクトを発する3点組の磁器の作品。それぞれの画面の中央部はタイルが敷き詰められ、そこに、磁器の白に映える深い青で花と流涎が描かれています。物理的な質感も相まって非常に重厚な作品。額の一部に見受けられるネジ山も生々しい感じ。
豊福春菜さんの写真「untitled #05-03」「#05-04」「#05-05」。
アイデアがかなり面白いです。肌の色の液体に手を浸けて、そこから覗く指などを撮ったものですが、色彩の感触がものすごく有機的なのと、同じ色の面から指が現れている奇妙な光景が印象的です。
パソコンでコントロールされたような作品も。
西原功織さんの油彩「かおをうま 056」。
緑のいななく馬を画面中央にどんと据えて、鮮やかな鞍に跨がる人、背景の紺色のチェックや流れるような赤。キャンバスを覆う絵の具の質感が、太い刷毛の幅が見て取れるほどにぐいぐいと力強く、また迷いのない刷毛捌きも痛快!
こうやって印象に残った作品をピックアップしてみると、既知のアーティストの作品が多くなるな、と。
何度か目にすることで、自分の中でそれぞれのアーティストへの印象や期待が育っていることを、こういう展示では特に強く自覚します。
http://www.ueno-mori.org/tenji/voca/2006/index.html
僕がVOCA展を観るのは今年で2度目ですが、すでに春の風物詩的な感じがしてます。
昨年は圧倒的に未知のアーティストの作品が多かったのですが、あれから1年経っていろいろと観て回ったおかげで今年のVOCAでは既知の作家の作品も多く、大好きなあのアーティストの大作が観られるという期待と、それでも未知のアーティストとの出会いがあってその驚きとの両方を堪能できました。
今年のVOCAのハイライトは、なんといっても小西真奈さんの「キンカザン1」「キンカザン2」。
油彩の作品で、「1」はむき出しの岩肌も目立つ波打ち際、「2」は靄が立ち篭めたような感じの鬱蒼とした森。海の青、岩肌の薄茶色、森の緑、どの色彩をとってもこのうえない瑞々しさがほとばしっていて、たっぷりの空間で眺めていて気持ちがどんどん清々しくなっていく感じがします。
小西さんの風景画には人物が登場することが多いのですが(これまで拝見した限りだと)、今回の作品では人物は大画面のなかに小さく描かれていて、これが絵の風景のスケールの大きさをさらに強調しているように思えました。
とにかく必見です!
ロバート・プラットさんの「Rendezvous」。
ミント色の下地に白のスプレッド。画面中央を横切るようにして、疾走する馬のシルエットが連続で描かれ、上方に黒の下地で木目調の模様、低い円柱のなかに鹿などのシルエットがパノラマみたいになって描かれている作品。さまざまなものがさまざまな色彩で重なることで得られるユニークな奥行き、そして使用される色から伝わる爽快感。これだけはっきりとした色彩なのに、ずっと眺めていたくなるような面白い絵です。
既にスターの貫禄がある、蜷川実花さんの「the otherside」。
赤い花が大きくプリントされたパネルに、プレキシパネル(厚めのアクリル板のようなもの?)にマウントされた40枚の写真。
とにかく原色の鮮やかさは強烈!花の表情の艶かしさといい、抜けるような空の青の青さといい、これほど鮮烈な色彩って他ではお目にかかれないような気がします。
橋爪彩さんの「少女都市」。こちらも折りに触れて拝見しているアーティスト。
夜、ガードレールに腰掛ける二人の女の子、彼女達は腰から下の部分しか画面には登場していませんが、それが例によって橋爪さんのエロティックな世界観をより強烈に演出している感じです。ひとりは白のスカートに裸足、脱ぎ散らかされた青のサンダル。もうひとりがチェックのスカートに黒のストッキングと靴。
すごく個性的で特徴のある写実力で、一目見たら忘れられない独特な光景が展開されています。
豊泉綾乃さんの「風景」。15版組の大きな銅版画。
exhibit Liveで初めて拝見した時から、何もないんだけどなぜか印象に残って心に引っ掛かってたのですが、今回大きな画面の作品を広い空間で観て、そのスケールの大きさ、残像の中に入り込むような感覚、焦燥と静謐との印象のコントラスト...とにかくそのモノクロームの世界を堪能できました。
佐伯洋江さんのシャープペンシルによる細密抽象画「Untitled」。
2点出展されていて、どちらも緩みなくピンとていねいに貼られた紙に、蓮、蜘蛛、ダリアをモチーフにしたようなものをとそのまわりに細かい模様などを組み合わせて、金銀の色鉛筆も一部使用しながら硬質で繊細な絵が描かれています。
描かれるもののぐっと引き込まれるような面白さがあるのですが、それとともに「余白の美しさ」も強く印象に残ります。日本のわびさびを未来的な感覚で表現したような。
楊雅淳さんの「遠くて、近いです」というコミカルなタイトルの作品。
内容もコミカル。カーテン状に描かれた白を背景に、緑、赤、黄が混ざりあった中央部。そこに黒の線で踊る人がいろんな縮尺と組み合わせで描かれていて、全体に軽くラメが散らばっているという作品。
描かれる人々の表情や仕草がなんとも言えず面白く、眺めていて思わず笑みが浮かんできます。特に左手前の比較的大きく描かれた女性(?)の表情が秀逸(笑)。
先日のギャラリー小柳や、今は渋谷のトウキョウワンダーサイトでインスタレーションが展示されている鬼頭健吾さんの平面作品「cosmic dust」。
凝縮された透明なビーズ、ピンク、ブルー、ホワイトのアクリル絵の具による糸状の線(たぶんそうだと思うのですが)、その裏に鏡。タイトル通り、まさに「宇宙の塵」が集まったような幻想的で未来的な画面、奥の鏡が効果的なのか、ユニークな奥行きがあります。このれが壁、天井、床に広がった中で、鬼頭さんのインスタレーションが展開されたらすごいだろうなぁ、と。
春木麻衣子さんの写真「Untitled 晴れ」。
例いよって写真の一部、というより画面の9割が黒。この黒はコントロールされたもので、実は青であったりグレーであったり、そういう色の究極の濃いかたちであるのですが、そうやって出現してきた黒の美しさが深く印象に残ります。
先のAランチでもオーダーが多かった(僕はし損ねたのですが、目の前を何度も通過していた)青木克世さんの「鏡よ鏡」。
平面のカテゴリーを強引に広げた、異様に作りこまれたゴージャスな額が強烈なインパクトを発する3点組の磁器の作品。それぞれの画面の中央部はタイルが敷き詰められ、そこに、磁器の白に映える深い青で花と流涎が描かれています。物理的な質感も相まって非常に重厚な作品。額の一部に見受けられるネジ山も生々しい感じ。
豊福春菜さんの写真「untitled #05-03」「#05-04」「#05-05」。
アイデアがかなり面白いです。肌の色の液体に手を浸けて、そこから覗く指などを撮ったものですが、色彩の感触がものすごく有機的なのと、同じ色の面から指が現れている奇妙な光景が印象的です。
パソコンでコントロールされたような作品も。
西原功織さんの油彩「かおをうま 056」。
緑のいななく馬を画面中央にどんと据えて、鮮やかな鞍に跨がる人、背景の紺色のチェックや流れるような赤。キャンバスを覆う絵の具の質感が、太い刷毛の幅が見て取れるほどにぐいぐいと力強く、また迷いのない刷毛捌きも痛快!
こうやって印象に残った作品をピックアップしてみると、既知のアーティストの作品が多くなるな、と。
何度か目にすることで、自分の中でそれぞれのアーティストへの印象や期待が育っていることを、こういう展示では特に強く自覚します。
コメント
春木さんの写真は、その制作の仕方もけっこうユニークで、詳しくは分からないのですが、たしか露光時間をコントロールして、例えば赤とか青とか、本来の色のもっとも濃いかたちがあの「黒」なんです。いずれにしてもユニークな写真ですよね。僕も大好きです。