絵画の行方 ―現代美術の美しさって何?
2006年1月8日 アート コメント (2)府中市美術館にて。(12/10-2/19)
http://www.art.city.fuchu.tokyo.jp/biennial.html
昨年末から始まっていたこの展示。
大谷有花さんの作品が広い空間で拝見できるということで楽しみにしていたのですが、本日行ってきました。
というのも今日は大谷さんのアーティスト・トークが開催される日で。それにあわせて2時前に美術館に着いたのですが、てっきり作品を前にして行われると思いきや、別室でプロジェクターを使って過去の作品を紹介しながら現在にいたる過程などを説明していく、というちょっと予想外でしたがかなり興味深く面白い内容でした。
というわけで、アーティスト・トーク後に展示室へ。
大谷さんの作品はエレベーターを昇って展示室の入り口を通ってすぐ左手に。
まず、コーナーの入口のところにキミドリとピンクの下地を白が包むように画面に広がる「白いソファー-花色-」。
大谷さんにとって白は「調和」のイメージだそうで、それが「無意識」のキミドリと「現実」のピンクを覆っていて、さらに「ふたりが座って対話しあう場所」としてのソファが描かれている作品。
なんだかすごく幸せなイメージが喚起されるようなステキな絵です。
中に入ると、まず嬉しいのが壁がキミドリになっていること!
一面のキミドリに展示されている作品たち。これは大谷さんにとってもかなり嬉しいことだったようです。
Gallery MoMoで拝見した作品や第一生命ギャラリーで発表されたものも含まれてますが、こういうシチュエーションであらためて観るとやはり違う印象で、より大谷さんが伝えようとするイメージの中に、心だけじゃなくそれこそ体全体で入っていけるような...すごくポジティブな空間演出がなされています。
今回の展示でのメインといってもいい作品は、横幅が10mという大きな作品「無意識との対話X」。
とにかく描くのが大変だったというこの作品、今回の展示のために描かれたとのことで美術館側ともいろいろ相談があったようなのですが...
「私のほうがもう10mというスタンスで描く、という心の準備ができてしまっていて、(府中市美術館学芸員の)山村さんにお話ししたときはすでに決意が固くて、山村さんの意見(小さい作品を含めて壁面に並べようというもの)もよかったんですけど、もう手後れな状態で(笑)。美術館で展示する上でこういうやりとりは楽しいんです、でもあの空間を考えたらやはり10mの作品を描きたいな、というのが最初の構想でした」
「さすがに10mというのは描いたことはなくて、4mとかはあったのですが...なのでこれは無意識、というよりは少し意識的、構造的な部分も出して描きました」
「体力的にはもうとにかく大変で、これが終わったあとはもう何も手をつけられない状態でしたね」
まさに今の大谷さんの集大成ともいえるような作品で、中心に「意識」を表す赤、その両脇に黒、両端にキミドリといった大谷さんらしい鮮やかな色彩感に加え、描かれているものも山、鳥らしきもの、ハシゴといったそれぞれ何かを象徴するようなものが詰まっています。アーティスト・トークでは再三「脳の中身はどうなっているか」ということに触れられてきたのですが、それとはとりあえず関係なくても充分に見ている側のイメージが活性化するような元気な作品です。
ここで初めて拝見した作品「無意識との対話VIII」、これはほぼ画面全体を黒が覆う、ちょっと雰囲気が違っていそうな感じなのですが、この黒も大谷さんにとってはポジティブな色だそうで、そう思って観るとその色の力強さがいっそう強調されて感じられ、他の作品と同様、あるいはもっとたくさんの元気をくれるような作品で。
とにかく素晴らしい展示でした!
ここまでやれるのが美術館の強みで、だとするともっと若い作家を紹介する企画があると楽しいな、とも思ったり。
他の作家の作品も見どころは多く、須賀昭初さんの作品は縦方向への動きが印象的、不器用な質感ながら黒などの太い線から異様な力強さ、動的な感じを受ける鈴木省三さんの作品、水上央子さんは曲面の構成によるポップな感触もある抽象作品で、おそらく丁寧にマスキングを施して描かれたであろうひとつひとつの色彩の部分とそれらの重なりが織り成すリズムが心地よく、色彩もそれぞれの作品で、例えば無彩色であったりパールっぽい感じであったりと統一感があって、けっこう面白いコンセプトを感じました。
http://www.art.city.fuchu.tokyo.jp/biennial.html
昨年末から始まっていたこの展示。
大谷有花さんの作品が広い空間で拝見できるということで楽しみにしていたのですが、本日行ってきました。
というのも今日は大谷さんのアーティスト・トークが開催される日で。それにあわせて2時前に美術館に着いたのですが、てっきり作品を前にして行われると思いきや、別室でプロジェクターを使って過去の作品を紹介しながら現在にいたる過程などを説明していく、というちょっと予想外でしたがかなり興味深く面白い内容でした。
というわけで、アーティスト・トーク後に展示室へ。
大谷さんの作品はエレベーターを昇って展示室の入り口を通ってすぐ左手に。
まず、コーナーの入口のところにキミドリとピンクの下地を白が包むように画面に広がる「白いソファー-花色-」。
大谷さんにとって白は「調和」のイメージだそうで、それが「無意識」のキミドリと「現実」のピンクを覆っていて、さらに「ふたりが座って対話しあう場所」としてのソファが描かれている作品。
なんだかすごく幸せなイメージが喚起されるようなステキな絵です。
中に入ると、まず嬉しいのが壁がキミドリになっていること!
一面のキミドリに展示されている作品たち。これは大谷さんにとってもかなり嬉しいことだったようです。
Gallery MoMoで拝見した作品や第一生命ギャラリーで発表されたものも含まれてますが、こういうシチュエーションであらためて観るとやはり違う印象で、より大谷さんが伝えようとするイメージの中に、心だけじゃなくそれこそ体全体で入っていけるような...すごくポジティブな空間演出がなされています。
今回の展示でのメインといってもいい作品は、横幅が10mという大きな作品「無意識との対話X」。
とにかく描くのが大変だったというこの作品、今回の展示のために描かれたとのことで美術館側ともいろいろ相談があったようなのですが...
「私のほうがもう10mというスタンスで描く、という心の準備ができてしまっていて、(府中市美術館学芸員の)山村さんにお話ししたときはすでに決意が固くて、山村さんの意見(小さい作品を含めて壁面に並べようというもの)もよかったんですけど、もう手後れな状態で(笑)。美術館で展示する上でこういうやりとりは楽しいんです、でもあの空間を考えたらやはり10mの作品を描きたいな、というのが最初の構想でした」
「さすがに10mというのは描いたことはなくて、4mとかはあったのですが...なのでこれは無意識、というよりは少し意識的、構造的な部分も出して描きました」
「体力的にはもうとにかく大変で、これが終わったあとはもう何も手をつけられない状態でしたね」
まさに今の大谷さんの集大成ともいえるような作品で、中心に「意識」を表す赤、その両脇に黒、両端にキミドリといった大谷さんらしい鮮やかな色彩感に加え、描かれているものも山、鳥らしきもの、ハシゴといったそれぞれ何かを象徴するようなものが詰まっています。アーティスト・トークでは再三「脳の中身はどうなっているか」ということに触れられてきたのですが、それとはとりあえず関係なくても充分に見ている側のイメージが活性化するような元気な作品です。
ここで初めて拝見した作品「無意識との対話VIII」、これはほぼ画面全体を黒が覆う、ちょっと雰囲気が違っていそうな感じなのですが、この黒も大谷さんにとってはポジティブな色だそうで、そう思って観るとその色の力強さがいっそう強調されて感じられ、他の作品と同様、あるいはもっとたくさんの元気をくれるような作品で。
とにかく素晴らしい展示でした!
ここまでやれるのが美術館の強みで、だとするともっと若い作家を紹介する企画があると楽しいな、とも思ったり。
他の作家の作品も見どころは多く、須賀昭初さんの作品は縦方向への動きが印象的、不器用な質感ながら黒などの太い線から異様な力強さ、動的な感じを受ける鈴木省三さんの作品、水上央子さんは曲面の構成によるポップな感触もある抽象作品で、おそらく丁寧にマスキングを施して描かれたであろうひとつひとつの色彩の部分とそれらの重なりが織り成すリズムが心地よく、色彩もそれぞれの作品で、例えば無彩色であったりパールっぽい感じであったりと統一感があって、けっこう面白いコンセプトを感じました。
コメント
相変わらず、DADAさんのレポートは臨場感があり
会場の様子をなまなましく想像することができます。
すばらしい展示だったみたいですね。
ありがとうございます。
あんまり誉められ慣れてないので恐縮です(汗)
大谷有花さんの作品は、ぱっと明るい感じがとにかく気持ちよくて大好きなんです。