元田久治 展(10/15)
2005年10月17日 アート
ギャラリー池田美術にて。(10/3〜10/15)
http://kgs-tokyo.jp/ikeda/2005/051003.htm
今年の2月にOギャラリーで観た元田さんの、新作を中心とした個展。
前回もかなり印象に残る作品だったのと、今回は池田美術という毎度渋い版画作品が展示されるギャラリーでの展示ということで、たいへん期待してました。
作品は、前回と同様にモノクロで精緻に描かれた、東京のさまざまな街が廃虚になった風景のリトグラフ。
それぞれの街の壊され具合、荒らされ具合は今回も健在で、銀座や渋谷など実際に知っているおなじみの景色が荒廃しているので作品がよりリアルに感じられ...これは観る方によって感じ方は千差万別だと思いますが、僕の場合、怖いというよりも「おいおい!」とツッコミたくなるようなユーモアを感じます。
ただ、今回の作品の一部で前回と違う印象の作品があって...空の部分が、今回の作品では版が抜かれたようになっていて、紙の色がそのまま活かされたかたちになっています。
僕がこれまで拝見してきて感じるリトグラフの特徴で、版を抜かれて紙の色がそのままの部分は、逆に(まさにこのニュアンス)前に飛び出てくるような質感があるのですが、今回拝見した元田さんの作品では、空や建物が光を反射している部分で抜かれているためにその部分がぐっと前に迫るように出てきている感じがします。
多くの作品の構図が、ちょうど中央付近がもっとも奥行があるようになっていて、道路が画面中央に向かってまっすぐ伸びている作品では、その道路のいちばん先がすごく面白いことになっています。
画面の中でもっとも奥行を感じる部分と空とが接しているわけで、そのもっとも遠い部分と版が抜かれてぐっと前に出てきている部分とがその箇所で強烈な違和感を醸し出していて、それが元田さんが描く世界をより強烈に非現実的な印象にしているように思えました。
また、その「抜き」がよりユニークな効果を生み出していたのが、浅草の雷門。
あの巨大な提灯が画面のど真ん中にあって、そのまわりが抜かれているために、提灯がものすごい勢いで迫ってくるような迫力があって、ある意味かなりファンキーで。
元田さんのお話では、今回はあえて版の数を減らしてみたとのことで。
これだけ細かく描き込まれた作品なのでそれだけで尋常ではない仕事だと思うのですが、こうやってひと手間なくすことでユニークな風合いが出るというのも興味深いです。
すべての作品が風景を正面から眺めたふうに描かれているのですが(だからこそ今回のような面白い効果が生まれたのですが)、松江泰治氏の地平線を画面から排除した写真のような構図なども面白そうです。
http://kgs-tokyo.jp/ikeda/2005/051003.htm
今年の2月にOギャラリーで観た元田さんの、新作を中心とした個展。
前回もかなり印象に残る作品だったのと、今回は池田美術という毎度渋い版画作品が展示されるギャラリーでの展示ということで、たいへん期待してました。
作品は、前回と同様にモノクロで精緻に描かれた、東京のさまざまな街が廃虚になった風景のリトグラフ。
それぞれの街の壊され具合、荒らされ具合は今回も健在で、銀座や渋谷など実際に知っているおなじみの景色が荒廃しているので作品がよりリアルに感じられ...これは観る方によって感じ方は千差万別だと思いますが、僕の場合、怖いというよりも「おいおい!」とツッコミたくなるようなユーモアを感じます。
ただ、今回の作品の一部で前回と違う印象の作品があって...空の部分が、今回の作品では版が抜かれたようになっていて、紙の色がそのまま活かされたかたちになっています。
僕がこれまで拝見してきて感じるリトグラフの特徴で、版を抜かれて紙の色がそのままの部分は、逆に(まさにこのニュアンス)前に飛び出てくるような質感があるのですが、今回拝見した元田さんの作品では、空や建物が光を反射している部分で抜かれているためにその部分がぐっと前に迫るように出てきている感じがします。
多くの作品の構図が、ちょうど中央付近がもっとも奥行があるようになっていて、道路が画面中央に向かってまっすぐ伸びている作品では、その道路のいちばん先がすごく面白いことになっています。
画面の中でもっとも奥行を感じる部分と空とが接しているわけで、そのもっとも遠い部分と版が抜かれてぐっと前に出てきている部分とがその箇所で強烈な違和感を醸し出していて、それが元田さんが描く世界をより強烈に非現実的な印象にしているように思えました。
また、その「抜き」がよりユニークな効果を生み出していたのが、浅草の雷門。
あの巨大な提灯が画面のど真ん中にあって、そのまわりが抜かれているために、提灯がものすごい勢いで迫ってくるような迫力があって、ある意味かなりファンキーで。
元田さんのお話では、今回はあえて版の数を減らしてみたとのことで。
これだけ細かく描き込まれた作品なのでそれだけで尋常ではない仕事だと思うのですが、こうやってひと手間なくすことでユニークな風合いが出るというのも興味深いです。
すべての作品が風景を正面から眺めたふうに描かれているのですが(だからこそ今回のような面白い効果が生まれたのですが)、松江泰治氏の地平線を画面から排除した写真のような構図なども面白そうです。
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