佐伯祐三−芸術家への道−展(9/23)
練馬区立美術館にて。(9/10〜10/23)
http://www.city.nerima.tokyo.jp/museum/tenji/saekiyuzou.html

佐伯グレー。

日本人画家のなかで、もっとも回顧展を観たいと思っていた佐伯祐三。
はじめて佐伯の作品に出会ってその暗くて力強い風景に圧倒されて以来、さまざまな美術館で佐伯の作品を観るごとにだんだんと好きになっていったのですが、ようやくまとめて鑑賞する機会が得られ、期待して行ってきた次第で。

この回顧展ではじめて佐伯が30才で短い人生を終えたことを知りました。
・・・驚きました。
この独特の色彩、画面全体を覆う暗いグレーのトーン、これらが20代で作り上げられたたことに。。。

最初のコーナーで自画像や肖像画を紹介しているのと途中でデッサンなど油彩以外の作品があるのを除けば、ほぼ時代順に作品が展示されていて、渡仏前〜1度目の渡仏〜帰国〜2度目の渡仏、というふうに並んでます。

これまでけっこう観てきたと思っていても、やはり佐伯の作品だけに囲まれるとその雰囲気、暗くて力強い風景画の荘厳さにはやはり圧倒され、そしてその世界に引き込まれていくような。
独特の遠近法というか...中央に道が奥へと通っている作品の多くで、手前の風景、建物などがぐわっと膨らむような感じで描かれていて、観る者に迫ってくるような印象があります。
また、どん、と建物を正面から描いた作品の尋常でない荘厳さ。

佐伯というとヴラマンクを思い浮かべ、機会があればこの師弟の作品を一緒に並べて観られたらと思っているのですが、今回の展示を観て、他の作家の作品とも比べてみたいと思いました。
ルオーの黒く太い稜線と、佐伯のちょっと茶が混じったような濃いグレーとを。
ビュフェの切れるような直線的な描き方と、佐伯の力強い歪みとを。

 
順を追って観ていって、その時期に佐伯がどんな心境だったのか、に想像を巡らせてしまいました。
佐伯の作品ではパリの街並みが描かれているものが結構な数ありますが、さらにその多くには敢えてポスターや看板などがある場所を選び、その文字まで画面に描いていて、それらを観て、フランスでは相当に気が張りつめていたように思えました。
ここまで文字を描き込むことについて、もちろん文字自体の形に魅力を感じていたというのはあると思いますが、やはりそうすることでフランス人にアピールしていたのかな、と。。。
何かこう、絶対この地で一旗揚げてやるという強い意気込み、必至さには悲愴感さえ感じてしまいました。
・・・だから、一時帰国中に描かれた作品に触れて...なかでもテニスをする風景を描いた作品のなんとものどかな雰囲気を感じて...フランス時代にはありえない明るくて和める雰囲気に、生まれ育ったところへの愛着やこれまで溜め込んでいた郷愁が溢れているような感じがして、やっぱり寂しかったのかな、とちょっと涙腺が...。
そしてふたたび渡仏してからの作品は、殺伐とした感触が強まり、描き込まれる文字はさらに鋭さを増しているような印象で、かつ風景も「敢えて」都市の裏側的な場所を選んでいるのではと・・・それらは、佐伯自身がさらに自分を追い込んでいるようにも解釈できて。。。
しかし、作品が醸し出す独特の魅力には抗うことはできず...辛かったかもしれない佐伯の心情に思いを馳せるより、作品そのものに見とれてしまい。。。

・・・佐伯祐三という画家が、さらに好きになりました。
これからは、もっと大事に観ていきたいと思います。

《感想リンク》
http://kooshoo.exblog.jp/3490190/
http://museumagogo.cocolog-nifty.com/museum_a_go_go/2005/09/post_9e37.html
http://blog.livedoor.jp/rock_garden/archives/50115102.html
http://artslog.seesaa.net/article/7353950.html
http://okehazama.cocolog-nifty.com/hiru_tsuki/2005/09/post_1116.html
http://blog.goo.ne.jp/lysander/e/5bafaa47aaca4b2d5bfc3831d5bcfa9b

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