鈴木太朗 個展 蒼のなかへ(9/24)
和田画廊にて。(9/16〜10/1)
http://www.wadagarou.com/wadanews1.html

印象に残っていたものが、繋がる瞬間。
繋がったときの快感。

鈴木太朗さんの今回の個展はまずTARO NASU GALLERYでDMを見つけて(それより数日後に鈴木さんからもDMを送っていただいてたのですが)、今年の芸大の修了展でかなり印象に残っていた作品の写真を見て「あ、この人の個展があるんだ!」とすごく楽しみで。
仕事なので会期が始まってもなかなか伺えずにいたのですが、この土曜日にようやく足を運ぶことができました。

入口左手にはまず微妙に歪んだ透明の管が見当で20本程度、台の上から生えるように並んでいて中には水が入っており、その中を気泡がランダムに昇っていく、というインスタレーション作品。
この気泡の動きが緩やかで、眺めているとだんだんと和んできて、心地よくなっていきます。
そして、暗くされたメインスペース。
修了展で拝見した作品、床置きの大きな作品で、多数の正方形の穴からは青い光が上へと広がり、それを覆う白の幕がその穴から吹き込む風で膨らんで、その度に穴と白い幕に映る像とが織り成すズレが、とにかくきれいで。。。
この作品は今回拝見できることは承知していたのですが、もうひとつメインスペースに展示されていた作品が、先日のスパイラルでのC-DEPOT展でも展示されていた、薄い水槽の中の白い砂が、底に等間隔に配置された噴射口から吹き上げられる作品。
・・・とにかく、まったく別の場所、別の時期に拝見した2つの印象的な作品が同じ作家によるものだと分かったときの嬉しい驚きといったら...。

それから会場内にひとりでいる時間ができたので、それぞれの作品をじっくりと観察。
水槽のほうは、前回拝見したときよりも砂の吹き上がり方が大きくなっていて。吹き上げの装置が作動する度に耳にする「コッ」という音も心地よく響きます。白い砂が青の光に照らされて幻想的。

続いて床置きの作品。
正方形は大きさはさまざまで並び方もかなりランダムですが、すべてが同じ角度で配置されています。
しばらく斜めの位置から眺めていたのですが、平面に開けられた穴は最初は2次元的な印象だったのが、だんだんと上部が正方形の立方体の並びに見えてきて...高層ビル群のシルエットのような立体感があって。幕を吹き上げる風はそのビル群にかかる雲のようで。。。
角度を変えて、今度は正面から。そうすると、立方体の連なりにも見えるのですが、風で幕が膨らむと光を放つブラウン管とその残像の集合にも見えて...無機的なものがなにか具体的なものに見えてくることでイメージの広がりが加速するような感覚があり、会場内をほのほのと照らす青の光に包まれているのと合わさって、現実から離れたような心地よさを感じます。

鈴木さんからもいろいろと伺えました。
イメージを創造する時期、必要な知識や技術を習得する時期、そして具現化する時期とあるとのこと。
また、今回の作品はいろいろと改善もされているとのことで、水槽の作品は砂の吹き上げが大きくなるようににしたり、青の作品は前回は光源が穴から見えていたのをそのひとつひとつに和紙のカバーを設置することで見えなくしたり、とデジタル・アナログの両面で手が加えられていて。
そういうお話の流れで無理を言って青の作品の構造を覗かせていただいたのですが...これが壮観。光源、ファン、コードでひしめき合っていて、それでいて静謐な感触もあって。
さらにこれらを管理するPCの画面も見せていただいて。どのファンをどれくらいのスピードで稼動させるかをコントロールしているのですが、整理された画面が生々しく感じられます。

印象的だったのが、これらの作品は「結果」というよりむしろ「経過」であるそうで、これらを配置するシチュエーションへとイメージが広がる場合もあれば、さらに別の要素が加わって進化する方向へと発展することも。
その度に研究などで時間がかかったり、経費のこともあってイメージの具現化は難しいことも多々あるそうですが、これまで出会ったアーティストとはまったく違った感覚で、ものすごく「続き」が楽しみな作家だと思います。

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