ギュスターヴ・モロー展(8/16)
BUNKAMURAザ・ミュージアムにて。(8/9〜10/23)現在開催中!
http://www.bunkamura.co.jp/museum/event/moreau/index.html

モローが描きたかった絵...。
この展示を拝見して、モローは描きたいものを描くことはできたけど、描きたいように描けたことは多くないのでは...そう感じました。

ひとつの主題に対して、残されているたくさんの習作や素描と小さな水彩画、油彩画、そして油彩の大作、というふうになっているものが多いのがまず印象的です。
繰り返しデッサンを描いたり、構図をいろいろと試したり、そういったひとつの作品を製作する過程がある意味生々しく展示されています。自身で決定的と思えるような作品を描くために夢中になっているような。
ただ、そうやって時間をかけて準備されて描かれた作品を観て、ある作品ではものすごい完成度に圧倒されますが、一方で「あれ、途中で飽きちゃったのかな」と思ってしまうようなものも。。。

例えば、最後のほうにある「聖セバスチティアヌス(1875頃)」。遠近感を充分に表現しつつ、群集ひとりひとりの姿や建物などがたいへん丁寧に描かれていたり、《サロメ》のコーナーの「出現(1876頃)」では、一度描きかけの段階で製作が中断していたものの上から宮殿の内部の様子が線画で重ね描きされていて、その部分の精緻さがかなり印象に残ります。
他に、「ヘラクレスとレルネのヒュドラ(製作年クレジットなし)」における、細微に至るまで描き込まれた7つの首を持つ蛇の怪物や、衣服やアクセサリーの装飾模様が細かい線で表現された「一角獣(1885頃)」。
これらの作品を観て、モローは徹底的に精微に描きたかったのでは、細かいものを丁寧に再現することが楽しかったのでは、と。
ひとつだけ出品されている扇絵、その丁寧な線画で描かれている妖精と、扇を構成する薄板の先に描かれた模様を眺めて、嬉々として製作しているモローの姿を想像してしまいます。

そういった作品の一方で、あくまで僕の主観ですが、完成作においても「・・・これくらいでいいや。」というふうに、その作品に対して醒めた感じが伝わってくるものも。。。
また、明らかに製作途中で描くのを止めた作品も展示されていますが、そういった作品はそれはそれで生々しさや人間味だけではなく、やはりこの時代独特の空気も伝わってきます。

そして、そういった僕の想像とは関係なく、作品そのものの魅力で圧倒してくる絵にもしっかり出会えているのです。
まず、最初のほうで展示されている「《エウロペ》あるいは《エウロペの誘拐》(1868)」。中央に描かれる、お互いに見つめあう女性と人の顔をした馬。それぞれも身体の線、表情、髪の流れ。また、手前の草花や奥に広がる空、どれをとっても隙のない圧倒的な完成度に感動。
そして、「旅する詩人(1891頃)」。晩年近くに描かれているこの作品が僕にとってこの展示におけるハイライトで、背中に楽器を抱えたまま岩場に腰かけ頬杖をつき、もの思いに耽るように視線を下に向ける詩人の表情のやわらかさと、その後ろに立ち詩人を見下ろすペガサスの精悍な姿。さらにそこが山の上であることをあらわすように、遠くに広がる青い山と空と...。さまざまな物語が思い浮かびます。
とにかくたいへんスケールが大きい作品です。

モローを観るのはおそらく今回が初めてでしたが、印象派以前のフランス絵画の深い世界を堪能できました。
ただ、こういった作品を拝見する度に思うのは、やはり関連する神話や歴史背景を知っておけばもっと深く感じ入ることができるのだろうな、と。。。

《感想リンク》
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=350
http://blog.goo.ne.jp/lysander/e/798028676643cde3463958ddc9702f63
http://megurigami.jugem.cc/?eid=285
http://library666.seesaa.net/article/5877113.html
http://julian.cocolog-nifty.com/floral_muse/2005/08/__angel_series__e117.html
http://palantir2.seesaa.net/article/5842974.html
http://blog.goo.ne.jp/harold1234/e/3ef1a9f3ef1114d36880d99f293d1ab9
http://blog.livedoor.jp/aoiroonga_tushin/archives/50010127.html
http://blog.goo.ne.jp/raidaisuki/e/2462f68556866749d91280493ad9b1b8
http://m619galaxy.seesaa.net/article/7067858.html

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