近代日本画の名匠−小林古径展(6/26、7/16)
東京国立近代美術館にて。(6/7〜7/18)
http://www.momat.go.jp/Honkan/Kokei/

前期と後期に一回ずつ観てきました。

まず、会期を通じて展示されていたふたつの作品、「加賀鳶」と「極楽井」。
「加賀鳶」からは、優れた俳句のような作品に思えました。
大作ではありますが、ひとつの画面の中にさまざまな表情が織り込まれていて...そして、例えば、画面の一番目につくところに、まさに「火事と喧嘩は江戸の華」の言葉通りに天を焦がす勢いで燃え盛る炎が描かれていると思えば、画面右手前にはその火柱に主役の座を奪われるどころか、それどころではない人々からも忘れ去られているように暗く描かれた桜の木が。はたまた、火事だってんで纏い抱えて参上した火消し連中と、家財道具を抱えて逃げる庶民、さらには近所の火事など気にも留めずにいつも通りの店先の様子。こういう対照的なものがひとつの作品に描かれていたのが面白く、それが僕にとって面白い俳句、リズム的にも制約がある17文字のなかに複数の情景を織り込む上等の俳句に似た感覚を覚えました。
「極楽井」は、当時の風俗、娘たちが纏った着物の柄がまず興味深かったです。ひとり、相当にモダンな柄の着物を着ていたり。また、裏に金の箔を貼られた画面から、その輝きが和紙の繊維の隙き間から滲み出ていて、その高貴な感じにも恐れ入りました。

前期は、「加賀鳶」と「極楽井」がいちばん印象に残ったこともあって、古径の「場面を描く力」を堪能しました。
前期のみの展示作品のなかでは、「闘草」が特に印象的で。
描かれる女の子の視線の先は画面に収まらない何かに注がれていて、それにたいして想像が広がったり・・・。

後期は、古径の「線」についていろいろと思いを馳せてみました。
基本的に、古径の作品は「ぬり絵」かなぁ、と思います(以前お目にかかった山口晃さんがご自分のスタイルを「ぬり絵」とおっしゃっていたことが頭に浮かびました)。
もちろん、描かれる「線」そのもの、太い細いといったところから濃淡まで、それらを駆使して描き分けられる表情はやはり素晴らしく、その線のほんの少しの流れ方で、描かれる人物の表情がやわらかく思えたり...その線自体の味わいも相当なものだと思うのです。
しかし、いちばん印象に残った作品「燕子花」、これはいわゆる「ぬり絵」スタイルではなく、透明感のある花びらの一枚一枚、茎、葉、画面下方を飛ぶ虫の羽に至るまで「線」が存在せず、その色彩の滲みがそのまま写実的な表現に活かされていて...その、儚ささえ感じられるやわらかな印象が心に静かに広がりました。
逆に、セピア色で描かれた「栗」。こちらは太めの線画に単色で彩色という作品でしたが、その線の太さが妙にコミカルで。。。

今、思い返すと、そのスタイルから考えて、古径の静物画って、どんどん描いていく中で、「ハマった」時に素晴らしい作品が生まれたのかな、と。
正直、辟易するくらいに多くの柿やら茄子やらの絵を観たわけですが、そういったなかに「燕子花」や「栗」、加えて前期の「木菟」など、心に残るものに出会えたのは貴重なことだったなぁ、と。
風景画や物語絵巻になると気合の入り方が違うなと感じますが...。

大幅な展示替えがあるということで前期と後期それぞれ観に行きましたが、ひとりの作家のたくさんの作品が観られたことよりも、同じ作家の回顧展に2度訪れることで見方に変化があったのが面白かったです。
面倒ではありますが、こういうのもありだなぁ、と。

日本画の大家の回顧展はもっとやってほしいです。
前田青邨、川端龍子あたりをやってくれたら嬉しいなぁ。。。

《感想リンク》
http://museumagogo.cocolog-nifty.com/museum_a_go_go/2005/06/post_75a3.html
http://museumagogo.cocolog-nifty.com/museum_a_go_go/2005/07/post_aecc.html
http://blog.goo.ne.jp/harold1234/e/efca38fd5f7a71bdd77adec21d8744d3
http://blog.goo.ne.jp/harold1234/e/4ed7da5e44e135757ae621b18df35707
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=306
http://sousleau.blog5.fc2.com/blog-entry-48.html
http://stagedoor.tea-nifty.com/open_a_door/2005/06/post_4085.html
http://okehazama.cocolog-nifty.com/hiru_tsuki/2005/06/post_3795.html
http://okehazama.cocolog-nifty.com/hiru_tsuki/2005/07/post_a166.html
http://blog.goo.ne.jp/lysander/e/629443748a29fe4e9c887b7b33b36e35
http://blog.goo.ne.jp/lysander/e/d8468ce26d43d25334a71b2b66641659

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