東京都現代美術館にて。(1/15〜3/21)
http://www.mot-art-museum.jp/ex/plan_h16-05.htm

抽象作品の展示は、ハマるととんでもなく気持ちいい。

この企画展のことを知ったのは昨年の暮れ、でもその時点ではまったく未知の作家でした。
そうするうちに、芸大の「HANGA」展にはじまり、池田美術と21+葉でのギャラリーでの展示、「痕跡」展というふうに、立て続けに榎倉の作品に触れる機会を持つことができ、まさに満を持しての鑑賞でした。

・・・が。
それまでのイメージ、予備知識など屁の突っ張りにもならないくらいの圧倒的なスケールの大きさに、まさにやられてしまいました。

まず最初に、まだ若い頃、後年の作風のかけらもない時期の作品が。
これにはびっくりで、特に、紙に水彩で描かれた「目」の抽象画、水彩の淡い色彩で描かれたミステリアスな世界は今回の展示の中において異色でありおながら、それはそれで素晴らしくて印象に残りました。

しかし、すぐに後年に続いていくような作品が。
ただ、最初のコーナーにあった作品については、無論後年に影響を与えたであろうことは考えられるとは言え、まだ「発想の転換こそ大事」で、アート性は二の次という印象。

続いて写真。
モノクロで、風景でありながら、それぞれの被写体の「物質」感が強く出手ている感じがしたのが印象的。
通路の映像作品は、少し時間をかけて観てみましたが、イマイチ掴めず。。。

通路を抜けてすぐの部屋では「予兆」とタイトルされた、写真や木枠に入った細長い鉄の板が。
写真は、人間の肌の接写や、床にたまった水たまり、浜辺に打ち寄せる波とその波の先端の曲線にあわせるように砂浜に横たわる男、床に落ちるキューブが落ち切る前で、宙に浮いているような感じに撮られている作品。

なんとなく「予兆」という言葉が頭から離れないまま・・・

次からいよいよ榎倉「らしい」作品へと。
おなじみ「二つのしみ」と、紙が油と黒のパステルや鉛筆で塗り分けられたもの、そして、キャンバスに張り合わされた布に廃油で正方形を描いた「干渉率B(空間に)」という一連の作品、布に廃油で材木の影がプリントされ、その木材自体もいっしょに展示されているもの。

ここで「あれ?」と、まず感じたこと。
紙に描かれた黒い部分は、肌の接写に。
同じく油で染められた部分の端、これは波の先が描く曲線に。
描かれたものがそれぞれ「肌」「波」であるというよりは、写真で撮ったものがこれらの「絵」の視覚的なモチーフとなったのかな、と。
では、廃油で描かれた「正方形」は?
・・・これが「宙に浮かぶキューブ」から繋がってくるイメージなのでは・・・。
そして、写真では物体とそのまわりとはまったく異なものであったのが、廃油が布に滲む効果でその差が曖昧になっていて・・・。
また、6枚の綿布のそれぞれ違う位置に描かれた正方形、これもまさに「宙に浮く」感じを演出しているのでは・・・

続くセクションには、天井が高い空間で、4方の壁にそれぞれ1点ずつ、巨大な横長の布の作品が。
黒の塗料で染められた布と白いままの布(劣化によってくすんだ色にはなっていましたが)とがずらして重ねられていて、その重なった部分に黒い布の色が白い方に移って「しみ」になっている。また、それぞれの作品の一部は床に敷かれたかたちになっている。
まず近付いてみたけど分からなくて、では逆に、とできる限り遠目から作品を眺めてみて・・・

「!」

あわててひとつ前のセクションに引き返す。
確認。
そして、また戻ってくる。
この時点での僕の想像は、
「この長方形の大きな黒い布は、正方形の一部分なのでは?」
・・・つまり、本来これらの作品のあるべき姿は、相当に大きい正方形なのでは・・・?
この広い空間をもってしても表現できない、巨大なイメージを喚起しようと榎倉は試みているのではないのか・・・?

そして、次のセクションへと。
ここでは、「Figure」とタイトルされた作品群。どれも相当に大きい。
ここでは、ひとつの布が黒い塗料で塗られていて、どれも白い部分が残されている。で、例によって黒い部分の端は、滲んでいる。
・・・正方形だったものが、その形から解放された?
さらに、作品によっては、黒の部分が白い部分で分断されているものも・・・「それ」はひとつではなくて、2つ以上存在する?
また、滲んだ部分と白の部分の織り成す線は、さきほどの鉄の板の、黒い部分と金属の輝く部分とが織り成すそれと繋がっているのでは・・・。

もう頭の中で今までにない壮大なイメージが膨らんでパンパンに張っている状態で、次のセクションへ進むと・・・

部分的に黒く染まった布。そして真っ黒な材木。その組み合わせの作品群。
もう笑うしかなかったです。
だって、これらの作品に触れた瞬間、それまで2次元だったイメージを一気に3次元へ移行することを「強要」されたのですから。

直後の記録写真に写っていたコンクリートのオブジェ、実際に同じ場所に展示されていたら、と思うと・・・

3階の最後の展示はエスキース、要するに設計図のようなもの。
1階には、立体の作品、よりによって今度は色が付いてきますか、という感じに一部青く染められた材木があって、もう無条件降伏。
残りの写真も、すべてが壮大なものに見えてしまって、放心状態での鑑賞となってしまいました。

(詳しくは別項に書きますが、ちょっと想像していただきたいことが。こういう精神状態で、引き続き「mot annual 2005」を観たわけですが、イチハラヒロコのあの作品を観た瞬間の僕の精神状態は以下略)

ところで、「二つのしみ」はどこにも繋がってなかったなぁ、と思ってたのですが・・・
ここで思い出したのが「痕跡」展。
ほぼ同じ作品、布が貼られたフェルトに、それぞれ布が貼られているところと貼られてないところに同じ形の「しみ」がプリントされた作品は、「痕跡」展の「時間」のカテゴリーで展示されていたはず。
・・・「時間」といえば、4番目の「次元」。

榎倉康二、あんたすげぇよ。

《感想リンク》
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=140
http://blog.goo.ne.jp/pizz/e/af247ada3dadea35273750d4c34b9381
http://blog.goo.ne.jp/harold1234/e/444a47c217db323884c4090392fb55e4
http://oki304.blog.ocn.ne.jp/lily/2005/01/post_26.html
http://blog.so-net.ne.jp/mckeee/2005-01-30-1
http://sahashi.exblog.jp/1734702/
http://blog.drecom.jp/kawaiyukiko/archive/38

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索